Googleアドワーズや、facebook広告、 Kindleなどへの支払については消費税が課税されてないことは皆さんご存知だと思います。これは、改正前の消費税法では、国内取引になるかどうかの判定基準が、「役務の提供を行う者の事務所等の所在地」だったからです。
消費税法が成立した1988年は、まだインターネットがなかったため、海外から日本国内の事業者などが、電子書籍や音楽、広告などを購入・消費するなんて想像もつかなかったためだと思います。
今回の改正はここにメスをいれることになる大きな改正で、国内事業者にとっては価格競争(消費税を含んで)では有利になる一方、経理負担がかなり増えることにより痛し痒しな改正となっております。
目次
- 消費税法改正に伴う、国内外判定基準の変更
- リバースチャージ方式とは
- 具体的な日々の仕分、申告の方法
- 注意すべきポイント
- まとめ
消費税法改正に伴う、国内外判定基準の変更
平成27年4月に消費税法の一部が改正され、国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税の見直しが行われました。
結論から言うと、行われた取引が「国内取引」か「国外取引」に該当するのかの判定基準が、サービスを提供した場所ではなく、サービスを受けた場所が国内外の判定基準になります。
平成27年10月1日以降の電子書籍・音楽・広告の配信などの電気通信回線(インターネット等)を介して行われる役務の提供(電気通信利用役務の提供)の消費税の課税対象となる国内取引に該当するか否かの判定基準が、役務の提供を行う者の事務所等の所在地から「役務の提供を受ける者の住所地等」 に変更されます。
これまでは、「電気通信利用の役務の提供」において、消費税の国内取引に該当するか否か(課税対象になるのかならないのか)の判定基準は、役務の提供を行う者の事務所等の所在地でした。
Googleアドワーズなどの「電気通信利用の役務の提供」を行う海外事業者から、日本の事業者へ役務の提供があった場合、判定結果は国外取引と判定されるため、消費税は課税されませんでした。
しかし、平成27年10月1日以降では「役務の提供を受ける者の住所地等」 に判定基準が変更されますので、国内取引として課税される事になります。
※「電気通信利用役務の提供」に関して改正が行われた理由は、国内事業者が国内事業者へ電気通信利用役務の提供を行った時は消費税が課税されるのに対し、国外事業者が国内事業者へ電気通信利用役務の提供を行う時は消費税が課されないため、競争上不公平な状況があったため、状況を是正するために改正が行われました。
リバースチャージ方式とは
「電気通信利用役務の提供」については、「事業者向け電気通信利用役務の提供」とそれ以外のもの、つまり「消費者向け電気通信利用役務の提供」の2つに分類されます。リバースチャージ方式は前者の事業者向けのみに適用されます。
リバースチャージ方式とは、国外事業者から役務の提供を受けた国内事業者が申告・納税を行うことを意味します。
消費税法において、課税資産の譲渡等を行った事業者が、申告・ 納税を行うこととなっていますが、電気通信利用役務の提供のうち「事業者向け電気通信利用役務の提供」に関しては、国外事業者から当該役務の提供を受けた国内事業者が申告・納税を行うこととなります。
ただ、「消費者向け電気通信利用役務の提供」に関しては、引き続き国外事業者に申告納税義務を課し、国外事業者が日本の税務署に申告・納税を行います。
- 「事業者向け電気通信利用役務の提供」
→役務の性質又は取引条件等から当該役務の提供を受けるものが通常事業者に限られるもの
例)インターネット上の広告の配信、アプリ等を販売する場所をインターネット上で提供するサービス - 「消費者向け電気通信利用役務の提供」
→広く消費者を対象に提供されているサービスや、事業者を対象に販売していても事実上事業者以外の申込みを制限できないもの
例)電子書籍・音楽・映像の配信等
具体的な日々の仕訳、申告の方法
具体的に見ていきましょう。
リバースチャージ方式「日々の仕訳」
例)アメリカの事業者から日本の事業者へ税込10,800円の「事業者向け電気通信利用の役務の提供」があったとします。
国内事業者は請求額のうち消費税を除いた金額を支払い、 消費税部分について国外事業者に代わり申告・納付することとなります
仕入 10,000/買掛金 10,000
仮払消費税 800/仮受消費税 800
仮受消費税 800/仮払消費税 800
※仮受消費税を計上するのは、国外事業者の納税分を一旦預かるため。
仮払消費税を計上するのは、課税仕入(特定課税仕入)に該当し、仕入税額控除の対象になるため。
リバースチャージ方式「申告の方法」
申告時に注意する点は下記の3つです。
- 課税標準額を計算する。
→課税売上高に特定課税仕入にかかる支払対価を算入し、課税標準額を計算する。
上記の例の場合、10,000円を算入します。 - 仕入税額控除の対象に
→特定課税仕入は仕入税額控除の対象になるため、課税仕入れとして扱いましょう。 - 申告書の別表、付表の必要箇所に記入する。
より詳しい申告書の作成方法はコチラからご確認ください。
※国税庁 平成27年5月発表 6~7ページ目
注意すべきポイント
リバースチャージ方式は「事業者向け電気通信利用の役務の提供」を受ける国内事業者全てが適用されるわけではありません。
下記の場合は、リバースチャージ方式による申告は必要ありません。
- 課税売上割合が95%以上の事業者
- 簡易課税制度を選択している事業者
- 免税事業者
リバースチャージ方式は経過措置により、課税期間において一般課税(本則課税)により申告する場合で、課税売上割合が 95% 未満である事業者にのみ適用されます。
課税売上割合が 95%以上の場合には、電気通信役務の提供取引は無かったものとされます。リバースチャージ方式に係る消費税の納税義務が免除されるとともに、仕入税額控除の対象にもなりません。
簡易課税制度が適用される事業者については、特定課税仕入れはなかったものとされ、免税事業者は納税義務が免除されていますので、リバースチャージ方式による申告は必要ありません。
国内事業者が国外事業者から、「消費者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合 、国外事業者が登録国外事業者であれば、役務の提供に係る課税仕入れについて仕入税額控除を行うことができ、登録国外事業者でない場合は、仕入税額控除を行うことができません。
※登録国外事業者
一定の要件を満たした登録国外事業者から受けた役務提供だけに国内事業者側での仕入税額控除が認められます。国税庁長官は登録国外事業者の名称等を、インターネットを通じて公表しています。
平成27年9月7日に国税庁から発表された登録国外事業者名簿はコチラです。
まとめ
リバースチャージ方式を採用しなければならない企業に該当する場合、平成27年10月1日から適用が開始されますので、経理処理などの事前準備が必要になるかと思います。どのような書類が必要か、どのように管理をするのかといった確定申告や資料の保存にもご留意ください。
また、今回の改正では経過措置がいつまでという期限が明記されておりません。今は該当しなくても将来的に該当する可能性がある方は続報の確認を怠らないようにご注意ください。