中小企業投資促進税制の上乗せ措置|設備投資を行った時のさらなる優遇税制

以前紹介させて頂きました「生産性向上設備投資促進税制」の後編です!
「生産性向上設備投資促進税制」の新設に伴って、従来からの「中小企業投資促進税制」(以下「中促」)がさらに手厚くなって中小企業投資促進税制の上乗せ措置(以下「中促の上乗せ措置」)という優遇措置が登場しています。
設備投資を行った場合、「生産性向上設備投資促進税制」・「中促」・「中促の上乗せ措置」の3つのどれかに当てはまる可能性がありますが、それぞれどう違うのでしょうか。その3つの中でも一番手厚い「中促の上乗せ措置」(即時償却又は最大10%の税額控除が適用)を今回は紹介致します!

中小企業投資促進税制の上乗せ措置について

  1. 制度の概要
  2. 適用要件
  3. 取得価格要件
  4. 対象となる設備(3つの税制の違い)
  5. 購入事例
  6. まとめ

 

1.「中促の上乗せ措置」制度の概要

◎ 概要

従来の「中促」の適用範囲内で、さらに「生産性向上設備投資促進税制」の適用要件であるA.「先端設備」とB.「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」に当てはまれば、「中促の上乗せ措置」として、生産性向上設備投資促進税制よりも更に厚い即時償却又は最大%10の税額控除が適用出来る税制措置です。

◎ 対象者

青色申告を行っている中小企業者等
中小企業者等とは以下の者をいう

  • 資本金または出資金の額が1億円以下の法人
  • 資本金または資本金を有しない場合は、常時使用の従業員数が1,000人以下の法人
  • 常時使用の従業員数が1,000人以下の個人事業主
  • 農業協同組合等

※但し、次の法人は、資本金が1億円以下でも中小企業者となりません。
①大規模法人(資本金もしくは出資金の額が1億円以上の法人)から2分の1以上の出資を受ける子会社
②2つ以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける子会社

※対象業種
製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業、その他の飲食店業(料亭、バー、ナイトクラブその他これらに類する事業は除く)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、通信業、損害保険代理業、サービス業(映画業、通信業以外の情報通信業、駐車場業、宿泊業、医療・福祉業、教育・学習支援業、自動車整備業、機械・家具等修理業、その他の事業サービス事業、廃棄物処理業)

◎ 適用期間、優遇措置

平成26年1月20日~平成29年3月31日(の間に取得・事業の用に供すること)

 上乗せ措置対象要件

  • 税額控除限度額は当期の法人税額の20%を上限とします。
  • 税額控除限度超過額の繰り越しは1年間可能です。
  • 購入ではなくリースの場合
    ①オペレーティングリースは本税制の対象外。
    ②所有権移転ファイナンスリース取引は対象。
    ③所有権移転外ファイナンスリース取引は対象。但し税額控除のみ適用可能。
    ※税額控除額は毎年のリース料ではなく、リース資産額の10%(従来の「中促」は7%)となります。

 

2.「中促の上乗せ措置」適用要件

  1. 従来の「中促」の対象設備であること
  2. 取得価格要件を満たしていること
  3. 生産性向上が認められること(以下のAもしくはBと認められる必要があります)

※3.の「生産性向上が認められること」について
「生産性向上設備投資促進税制」の適用要件A.「先端設備」とB.「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」と同じ要件内容になります。
例外として、『機械装置』のソフトウェア組込型機械装置や、『ソフトウェア』については、A要件である先端設備を一部適用しなくてもよいこととされています。(詳しくはメーカー等にご確認下さい。)

 

3.「中促の上乗せ措置」取得価格要件

上乗せ措置 取得価格要件 最終

指定された器具及び備品単位で判定します。よって、同じ器具備品でも、違う設備の場合は、取得価格として合計することはできません。
例1)電子計算機60万円、デジタル複合機60万円で器具備品の合計が120万円。
→要件を満たしません。
例2)デジタル複合機を35万円1台、35万円1台、60万円1台で、デジタル複合機の合計が3台130万円。
→要件を満たします。

 

4.対象となる設備(3つの税制の違い)

3つの税制のうち、どの税制に当てはまるかを判断する際は、以下3つがポイントとなります。

  1. どの税制の『対象設備』にあてはまるか
  2. どの税制の『取得要件』を満たしているか
  3. 『生産性向上と認められる設備か』

1.の「どの税制の『対象設備』にあてはまるか」 についての3つの税制の違いは下記の表をご参照下さい。(今回の「中促の上乗せ措置」は、赤枠内の設備が対象となります。)

 

対象設備3つの違い

出典:経済産業省WEBサイト
(http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/seisanseikojo/setsumeikai140701.pdf)

以下に挙げるものは対象外となります

  • 設備の修繕等の資本的支出(既に有する資産の修理・改良のために行った支出)
  • 販売用資産
  • 中古資産
  • 貸付資産
  • 海外で使用する設備
  • 本店・寄宿舎等、事務用品器具備品、福利厚生施設等の生産性に寄与しない設備

 

5.購入事例(どの税制に当てはまる?)

(事例1)
資本金1,000万の製造業を営む法人が、ある最新型の製造機械を300万で購入し、製造処理能力が従来より3倍になった。メーカーに問合せたところ、「生産性向上設備投資促進税制」の適用要件A.「先端設備」に当てはまるとのことで証明書を発行してもらった。(Aの証明書は購入後の発行でOK)

→3つ税制(「生産性向上設備投資税制」・「中促」・「中促の上乗せ措置」)のどれにも当てはまるので、一番手厚い「中促の上乗せ措置」である即時償却or税額控除10%を適用した。

 

(事例2)
デジタル複合機A.40万、B.40万、C.40万で3台120万円購入を予定している。メーカーに問合せたところ、全て「生産性向上設備投資促進税制」の適用要件A.「先端設備」に当てはまるとのこと。

→従来の「中促」と「中促の上乗せ措置」は取得価格要件が1台120万円以上なので適用外。
「生産性向上設備投資促進税制」は取得価格要件が単品30万円以上かつ一事業年度合計額が120万円以上なので対象。
ただし、「生産性向上設備投資促進税制」の適用要件A.「先端設備」の対象設備ではないため、対象設備が限定されていないB.「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」を適用するために、経済産業局に事前に書類を提出・確認書の交付を受けた後に購入した。(Bの確認書は購入前に交付してもらわなければいけない)
平成26年8月に取得し、事業の用に供したので、「生産性向上設備投資促進税制」の優遇措置である即時償却or5%税額控除が可能となった。

 

 6.中小企業設備投資促進税制の上乗せ措置 まとめ

前回の「生産性向上設備投資促進税」に引き続き、より手厚い優遇税制「中小企業設備促進税制の上乗せ措置」をご紹介させて頂きましたがいかがでしたでしょうか。優遇税制があるのでこれを機に設備投資をしよう!とお考えの場合は、生産性が向上すると認められる設備かどうかをまずメーカーや顧問税理士に確認してみましょう。税額控除は、利益もお金も減らさない有効な節税策です。似た制度が3つもあってどれに該当するのかわかりにくいところもありますが確認してしっかりと有効活用していきましょう!