自民・公明両党は2013年12月10日、生活必需品などの消費税率を低く抑える軽減税率の導入に大筋で合意した。?対象品目の選定や、インボイス方式・帳簿方式のどちらを選択するのかなどは今後の課題だが、経理の現場にとって負担が増えるのは確実だ……
ただでさえ、平成24年4月1日以後に開始される事業年度は(課税売上が5億を超える場合においては)個別対応方式又は一括比例配分方式のいずれかの選択が必要になり負担が増している。それに加えて税率の入力やチェックの負担が増えることになりそうだ。
今回は軽減税率導入により経理の現場の負担がどのように増えるのかをご紹介しよう。
- 免税事業者の場合
- 簡易課税制度を選択してる事業者の場合
- 本則課税の場合
軽減税率導入 免税事業者の場合
売上についての経理手続き
軽減税率が適用されるモノやサービスを販売していない場合は、負担増にはならない。
軽減税率が適用されるモノやサービスを販売している場合は、
- インボイス方式の場合、商品や価格、税率や税額を記入するインボイスの発行が必要。
- 帳簿方式の場合、請求書や領収書に税率毎の取引額を分けて記載することが必要。
- 小売の場合は軽減税率に対応してるレジが必要。
経費についての経理手続き
免税事業者の場合は、負担増にはならない。
軽減税率導入 簡易課税制度を選択してる事業者の場合
売上についての経理手続き
軽減税率が適用されるモノやサービスを販売していない場合は、負担増にはならない。
軽減税率が適用されるモノやサービスを販売している場合は、
- インボイス方式の場合、商品や価格、税率や税額を記入するインボイスの発行が必要。
- 帳簿方式の場合、請求書や領収書に税率毎の取引額を分けて記載することが必要。
- 小売の場合は軽減税率に対応してるレジが必要。
- 売上高の会計処理を、税率に応じて分けて計上する必要がある。
事業区分に応じて計上するのは従前通り。 - 売上高の計上が税率に応じて適正に処理されてるかチェックが必要。
経費についての経理手続き
簡易課税制度を選択してる事業者の場合は、負担増にはならない。
軽減税率導入 本則課税の場合
売上についての経理手続き
軽減税率が適用されるモノやサービスを販売していない場合は、負担増にはならない。
軽減税率が適用されるモノやサービスを販売している場合は、
- インボイス方式の場合、商品や価格、税率や税額を記入するインボイスの発行が必要。
- 帳簿方式の場合、請求書や領収書に税率毎の取引額を分けて記載することが必要。
- 小売の場合は軽減税率に対応してるレジが必要。
- 売上高の会計処理を、税率に応じて分けて計上する必要がある。
- 売上高の計上が税率に応じて適正に処理されてるかチェックが必要。
経費についての経理手続き
- 税率に応じて計上する必要がある。
- 税率チェックは、証憑書類を確認する必要がある。
(帳簿だけでは判断できない)
個別対応方式を選択してる場合の経費の消費税の判断
- まず、課税取引なのか判断し
- 課税であれば、課税売上にのみ対応する課税仕入なのか、課税売上と非課税売上に共通対応する課税仕入なのか、はたまた非課税売上にのみに対応する課税仕入なのかを判断し
- 最後に証憑書類を見て、税率を確認し経理処理する必要がある。
上記のように負担が増えるのは確実だ。
自民・公明両党では大筋合意しており導入の可能性も高い。レジや会計ソフトを扱うITベンダーにとっては朗報ではあるかもしれないが、現場の混乱は必至であり、経理マンとしては今からすでに頭の痛い問題である。
(税理士 稲見益輔)