マイナンバー導入後に企業が行うことを詳しく解説

平成27年10月からマイナンバー制度がスタートします。
マイナンバーは、国が住民票をもっている全ての人に1人1つの番号を付して、税や社会保障等の分野で効率的に情報を管理するための制度です。
マイナンバー制度については、「マイナンバー制度ってなに?覆面税理士がわかりやすく解説」をご覧ください。
今回は、マイナンバーが導入されたら企業がしなければならないことをご紹介させて頂きます。

  1. マイナンバーはいつから導入、通知されますか?
  2. マイナンバーはどんなことに利用しますか?
  3. マイナンバーが通知されたら企業が行うべきこと
  4. マイナンバーQ&A
  5. 罰金規定
  6. まとめと対策

1. マイナンバーはいつから導入、通知されますか?

平成27年10月から、住民票を有する全ての方に1人1つのマイナンバー(個人番号)が、通知されます。
市区町村から、住民票の住所に通知カードが送られてきます。
住民票と異なるところに住んでいる場合は、通知カードが届かないので、住んでいるところに住民票を異動させて下さい。

 

2. マイナンバーはどんなことに利用しますか?

社会保障・税・災害対策分野の中で法律で定められた行政の手続きでしか使えません。

  • 社会保障(年金・労働・医療・福祉)の分野
    年金の資格取得や確認、給付・ハローワークの事務・医療保険の給付の請求・福祉分野の給付・生活保護等
  • 税の分野
    税務当局に提出する申告書、届出書、調書などに記載・税務当局の内部事務
  • 災害対策の分野
    被災者生活再建支援金の支給・被災者台帳の作成事務

 

3. マイナンバーが通知されたら企業が行うべきこと

いつまでに従業員から集める必要がありますか。

マイナンバーは、平成27年10月に市区町村から通知カードの配布が開始されます。従業員の方に通知カードが届きましたら、マイナンバーの収集は可能ですが、国がマイナンバーを利用開始するのは平成28年1月以降です。
今年の年末調整の時期に税務署から送付されてくる年末調整関係資料の中に、翌年分である「28年分 給与所得者の扶養控除申告書」にはマイナンバーの記載欄がありますので、その時収集するのが1番スムーズに行えます。

マイナンバーを集めるときの注意点

利用目的はきちんと通知又は公表する必要があります!

収集は、はっきりした利用目的をもって、従業員の方に示して、行うことが必要です。
収集当初示した利用目的以外にマイナンバーを利用することは禁止されています。
目的の追加も本人への通知なしにはできません。
ただし、当初から複数の利用目的を示して収集しておくことは認められていますので、収集時には複数の利用目的を示して収集することをおすすめします。

  • 給与所得・退職所得の源泉徴収票作成事務
  • 雇用保険届出・申請事務
  • 健康保険・厚生年金保険届出・申請事務
  • 国民年金の第3号被保険者の届出に関する事務
  • 労働者災害補償保険法に基づく請求に関する事務

従業員の方に利用目的を通知するときの利用目的通知書のサンプルです。
このままでは使えないので、コピーして使用して下さい。

マイナンバー取得時には、本人確認は厳格に行って下さい。

本人確認は、なりすまし防止のためにマイナンバーの確認と身元の確認を厳重に行う必要があります。

本人確認の方法

  • 個人番号カードの場合
    1枚でマイナンバーの確認と身元確認が可能です。
  • 個人番号カードを取得していない場合
    通知カード+免許証orパスポート等で確認を行います。
  • 通知カードを紛失している場合
    住民票(マイナンバー付)+免許証orパスポート等で確認を行います。

保管ルール

必要がある場合だけ保管が可能です。必要でなくなったら破棄して下さい。

必要がある場合とは、

  • 翌年以降も継続して雇用契約が認められる場合
  • 所管法令によって、一定期間保存が義務付られている場合

マイナンバーの保管には、細心の注意が必要です。
例えば、担当者を決めて、担当者以外が取り扱うことのないようにする。間仕切りを設置して、覗き見されない場所に座席配置をする。書類は鍵付のキャビネットに保管する。ウイルス対策ソフトウェアを導入して、最新の状態にアップデートしておく等です。

新入社員を雇用するとき

入社時に、扶養控除申告書などのマイナンバーが記載された書類を収集します。
取得の際には、利用目的はきちんと通知又は公表して下さい。又、本人確認も厳格に行って下さい。
その際に、提出先を示す必要はありません。利用目的を示せば、提出先も明らかになっていると理解されているからです。
例えば、源泉徴収票でしたら、税務署に提出と理解されます。

就職内定者からマイナンバーを収集してもいいの?
就職内定者のマイナンバーの収集は、立場や状況が異なるので、一律に取り扱うことはできません。内定者に正式に内定通知がなされ、入社についての内定承諾書等を提出しているなど、確実に雇用が予想される場合、その時点でマイナンバーの提出を求めることが可能です。

従業員が退職するとき

社会保障および税に関する手続書類の作成事務を行う必要がなくなりますので、保存期間の経過した書類は破棄または削除しなければなりません。
マイナンバーが記載された書類は、そのままゴミ箱に捨ててはいけません。必ずシュレッターなどで番号がわからないように破棄して下さい。

【マイナンバーに関する書類と保存期間】

  • 属する年の翌年1月11日から7年間
    給与所得者の扶養控除申告書
    給与所得者の配偶者特別控除申告書
    源泉徴収簿
  • 退職日から4年間
    雇用保険資格取得確認通知書
    雇用保険被保険者離職証明書
  • 退職日から3年間
    労災保険に関する書類
  • 退職日等から2年間
    健康保険・厚生年金保険 資格取得確認通知書
    健康保険・厚生年金保険 資格喪失確認通知書

マイナンバーを削除すれば通常の個人情報として保管は可能です。
退職後も情報を保管・管理したい場合は、マイナンバーの部分だけを削除して下さい。

4. マイナンバーQ&A

Q. 通知カードと個人番号カードのちがいは?

A. 通知カード

平成27年10月から随時市区町村から、住民票の住所に郵送されてきます。
基本4情報(氏名、住所、生年月日、性別)を券面に記載。顔写真はなし。

個人番号通知カード

平成28年1月以降、希望者に交付されます。市区町村が作成し、窓口で本人確認を行った上で交付されます。
基本4情報(氏名、住所、生年月日、性別)+顔写真を表面に記載
マイナンバーを裏面に記載
マイナンバーと基本4情報をICチップに記録
※個人番号カードには有効期限があります。
発行時の年齢が20歳以上の場合は、10年間。20歳未満の場合は、5年間です。

図1

個人番号カードは、市町村が地域住民の利便性向上の為に独自に活用することが認められている為、市町村が条例で定めていれば、図書館の利用カードや印鑑登録証などを兼ねる事も可能です。今後様々な場面で便利なカードになることが期待されています。

Q. 扶養親族の本人確認は必要ですか?

A. 扶養控除申告書の場合は、本人確認の必要はありません。
扶養控除申告書の提出については、会社への提出義務は従業員の方なので、本人確認の必要がありません。

国民年金の第3号被保険者の届出は、本人確認が必要です。
国民年金の第3号被保険者の届出は、会社への提出義務は扶養親族であるため、本人確認が必要になります。
本人確認の方法としては、2パターン考えられます。

  1. 従業員が扶養親族の代理人になるパターン
  2. 従業員が会社の代理人になるパターン

Q. パート・アルバイトの方もマイナンバーの確認が必要ですか?

A. パート・アルバイト、謝金の支払がある社外の方からもマイナンバーは取得する必要があります。
短期のパート・アルバイト、報酬の支払などは、平成28年1月以降、早期にマイナンバーの取得・記載が必要になるので、注意して下さい。

Q. 派遣社員もマイナンバーの確認が必要ですか?

A.派遣社員の場合は、派遣元が全ての手続きを行うので、取得する必要はありません。

 

5. 罰則規定

マイナンバー制度の施行に伴う特定個人情報の漏洩については、既存の個人情報保護法と違う罰則になっています。
以下のような違反があった場合、「4年以下の懲役または200万円以下の罰金」もしくはその両方が科せられるおそれがあります。

  • 正当な理由なく、業務で取り扱う個人の秘密が記録された特定個人情報ファイルの提供
  • 業務に関して知り得たマイナンバーを自己や第三者の不正な利益を図る目的で提供し、または盗用

企業のリスクとしては、

  • 民事損害賠償…管理している企業に対して、使用責任や監督責任が追及される
  • 刑事罰…不正行為を行った従業員と雇用している企業に対しての両罰規定
  • 行政対応…ずさんな安全管理措置がされている場合、企業名を公表して是正を促す

上記のリスクが考えられますが、1番のリスクは社会からの信用をなくすことです。
情報漏洩によって企業が受けるダメージは、多大なものです。
くれぐれも取り扱いには気を付けて下さい。

 

6. まとめと対策

マイナンバー制度は、平成28年1月からスタートします。
マイナンバーはたくさんの情報を紐付けるものであり、個人情報につながります。
また、一生涯使うものですので、今まで以上に従業員の重要な情報を扱うことになります。
「収集・保管・利用・破棄」まで「誰が」「いつ」「どのような形で」というところまできちんとルールを作成し、管理運用には十分に注意して下さい。

 

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