元税務調査官が語る「知っておいたほうがいい税務調査の実情」

今回は、税務調査で守る側の経理担当者が知っておいたほうがいい税務調査の実情について、どんな会社が税務調査の対象になりやすいのかを中心にまとめた。

  1. そもそも税務調査とは?
  2. どんな会社に税務調査は来るの?
  3. 税務調査ってどこまで調べるの?

 

1.そもそも税務調査とは?

日本の所得税や法人税は申告納税制度を採用しており、税金を納税者自らが税務署等へ申告し、税額を確定させて納税する方式をとっている。これらの申告が正しく行われているかを調査するのが税務調査である。
会社や個人事業主にとって税務調査を受けるのは宿命であり、調査する側(税務署)と調査される側(納税者)の戦いで、調査する側は性悪説を基本として実施する。

・税務調査には強制調査と任意調査がある

強制調査は国税局査察部(マルサ)が大口で悪質な脱税者に対して行う調査で、一般的に行われるのは任意調査である。

・どこ会社に税務調査を行うのかは、どのように決めるのか?

中小企業の調査担当は税務署で大企業の調査担当は国税局調査部ですが、調査先の選定は調査部門の統括官(課長級)が行う。

・税務調査の事前連絡はありますか?

原則、顧問税理士及び会社に電話にて事前連絡があり、日程調査を行うが、次のようなケースでは事前通知が行われずに無予告で税務調査が行われる。

  1. 会社が重加算税の対象となる脱税(仮装隠蔽)行為を行っていると想定されるケース
  2. 飲食業や小売業など、不特定多数の者と現金決済で商売を行っているケース

なお、申告書提出の際に税理士法33条の2書面添付をしていれば、顧問税理士が税務署に出向いて説明する「意見陳述」だけで済むケースもある。

・税務調査の日程を決める際に気を付けることはあるか?

税務調査の事前準備ができるように、余裕をもって日程を決める。

 

2.どんな会社に税務調査は来るの?

基本的に税務調査の対象となるのは、問題点(追徴税額)がありそうな会社である。
では、具体的にどのように選ばれのかは、次の事項を総合勘案して決定される。

①前回調査からの経過年数

前回調査または設立日から3期(年)以上経過している会社が対象となる可能性が高いですが、申告においての異常計数が多い会社や、資料情報があるため早く調査を実施しなければならない会社においては、2期(年)あるいは1期(年)が経過した時点でも税務調査実施の候補に選ばれるケースがある。

②申告においての異常計数が目立つ会社

例えば、前期に比べて売上が増加しているにもかかわらず、営業利益や申告所得が減少している会社や、例年に比べて多額の経費計上がある企業などの異常計数が目立つ会社は、税務調査実施の候補に選ばれる可能性が高い。

③資料情報がある会社

税務署は国税庁という全国展開している大組織の中の1支店なので、企業に対する資料情報は蓄積しており、その中で脱税行為(重加算税対象)の問題点ありの可能性が高い企業については、税務調査実施の候補に選ばれる可能性が高い。

④前回調査で脱税行為(重加算税対象)を行っていた会社

前回調査で脱税行為(重加算税対象)を行っていた会社は、また同じ誤ちを繰り返す可能性があるとともに、是正状況についても確認する必要があるので、税務調査実施の再候補に選ばれる可能性が高い。

⑤長期未接触法人

申告においての異常計数もなく、問題のある資料情報もない企業については、通常は税務調査実施の候補からは外れるが、前回調査から5期(年)以上経過しており、ある程度の売上金額や申告所得がある企業は、定期検診という意味合いで税務調査実施の候補に選ばれるケースがある。

 

3.税務調査ってどこまで調べるの?

税務署は全国展開している国税庁という大組織の中の1支店であり、恐るべきほどの情報収集能力を持っている。税務調査対象の企業の取引情報については、調査を実施する前段階である程度把握している。
また、市町村と協力関係にあるので社長を含めた役員や主な従業員(経理担当等)の収入状況及び家族状況などの個人情報も把握している。
調査官は税務調査本番までに相当な情報を収集しており、調査重要ポイントを絞って効率よく税務調査を実施することに心掛けており、不審点については必ず解明するように上司(統括官)から指示されている。

税務調査は、主に帳簿及び書類が保管している事務所で行うが、製造業であれば工場、小売業であれば店舗などの現場確認を行うとともに、従業員にも業務内容の聴き取りも行う場合がある。

通常は、帳簿調査を中心に実施するが、現況調査や現金監査なども行う。
事実関係の確認で、調査先のみでは困難な場合は、取引先や銀行に臨場して、確認調査を行う反面調査を実施する。
また、深度ある反面調査が必要な場合は、取引先の所轄税務署に依頼して、取引先への税務調査を実施してもらい事実関係の確認を行う連携調査を実施する。
反面調査や連携調査が行われた取引先には、時間も含めて取引先に迷惑をかけてしまうとともに信用問題にも関わることもある。

税務調査は担当調査官のみで行われるのではなく、全国展開している国税庁という大組織で行うのでどんなに巧妙な手口を使っても脱税行為は必ずバレてしまう。まずは適正申告を心掛けるのが重要だ。