税務調査では特に重視される資料や項目が存在する。これらについては確実に対策し、スムーズな調査ができるようにしておくべきだ。そこで今回からは法人の税務調査対策についてまとめていく。
初回は、初動調査、売上計上、仕入、外注費、棚卸(期末計上)についての説明しよう。
法人の税務調査対策 その1の内容
- 初動調査
-概況聴取
-現況調査
-現金監査 - 売上計上
- 仕入、外注費、棚卸(期末計上)
法人の税務調査対策 初動調査
概況聴取
税務調査官の主な調査事項
- 代表者個人に関する話題
時候、趣味、家庭の状況(家族構成、子供の勤務先) - 会社概況
会社の沿革、業務内容、営業方針、取引先の範囲、取引条件 - 経理状況の確認
現金・小切手の管理者、管理場所
元帳、売上帳、仕入帳、現金出納帳、手形記入帳 - 現場確認
店舗、工場、倉庫等を実地に確認する。
取扱商品(商品、製品の保管場所、責任者)
製造工程(機械、原材料、副産物、作成書類、事務の連絡方法等)
守る側の税務調査対応策
会社概況や日常業務の流れが具体的に説明できるように予め準備しておこう。自分の会社が何を業としているのか税務署の調査官が正しく理解できるよう、例えば、製造業などは工場見学などを交えてもいい。卸売業などは取扱商品をパンフレット等で説明できるようにしておこう。
※余計なことはしゃべらない!
傷口になる可能性もあるからだ。
現況調査
税務調査官の主な調査事項
- 事務所内の机、書類の保管場所、金庫などの中について実地確認を行う。
守る側の税務調査対応策
調査当日に書類の保管場所、机、金庫などの中をチェックされても大丈夫なように整理整頓しておきたい。現況調査は調査初日に行われるとは限らず、2日目に行われることもあるので注意が必要だ。
現金監査
税務調査官の主な調査事項
- 現金出納帳残高と現金残高が一致しているかを確認する。
守る側の税務調査対策
調査当日の現金残高と現金出納帳残高を必ず一致させておくこと。
※現金不一致の場合は、原因解明に時間がかかるとともに税務署の調査官に杜撰な印象を与える。
法人の税務調査対策 売上計上
税務調査官の主な調査事項
- 仕入から売上げまでの管理の状況を聴取し、どのような書類を作成しているかを把握する。
- 取引状況の把握
- 受注→出荷・運送→納品→請求→代金の回収
- どんな様式で保管者は誰か、または納品書、請求書、領収証は?
- 一連番号を付しているかも確認する可能性がある
- 実際に作成している営業担当者や事務員に直接質問する場合もある
- 売上帳(得意先台帳) から検討
通常の取引と異なる取引先(不審な得意先)や定められた契約と異なる得意先を抽出して、証票類の精査、決済状況を検討する。
守る側の税務調査対策
受注から商品の手配、そして引き渡しまでの一連の流れを税務署の調査官に説明できるようにしておこう。見積書及び受注の際に作成する書類、納品書、請求書等は予め税務署の調査官に提示できるようにしっかり準備しておく。過去のイレギュラーな取引は時間をかけて調査し、調査官にきちんと説明できるように。期末の売上計上の検討は、調査必須項目であるから、正確に計上するようにしよう。
※税務署の調査官の中には、期末計上の状況によってその会社の経理状況を判断する者もいる。
法人の税務調査対策 仕入、外注費・棚卸(期末計上)
仕入、外注費
税務調査官の主な調査事項
- 取引状況の把握
発注から入庫、代金支払までの間に記録、作成される各種の伝票、帳簿類、メモなどが、いつ、誰によって作成され、どこに、誰が保管しているか確認する。 - 原始記録及び仕入帳の検討
不審な仕入を抽出して、これらの仕入に係る原始記録と仕入帳の関連を検討する。
守る側の税務調査対策
発注から代金決済までの証票類を整理して、調査官に説明しながら提示できるように整理しておこう。仕入関係書類を調査官に提示できるように整理し、期末の仕入、外注費計上は特に正確に計上しておくこと。
棚卸(期末計上)
税務調査官の主な調査事項
- 実地棚卸しの実施時期
- 実地棚卸しの担当者
- 棚卸高の集計表
- 棚卸の原始記録の保存状況
税務署の調査官は棚卸の原始記録の把握を重視する。
※積送品や預け在庫は計上漏れになりやすいため、要検討事項にしている。
守る側の税務調査対策
日々の棚卸の管理状況から、期末棚卸しの実施状況まで、説明できるように整理する。積送品および預け在庫は確実に計上しておくこと。
※計上漏れしやすい項目であるから、ポイントにする調査官が多い。
次号では、今回説明できなかった一般管理費などの税務調査対策を紹介していく。