元税務調査官が語る「税務調査に関する知られざる雑学」

今回は税務調査にまつわる知ってお得な雑学についてまとめてみた。こうしたトリビアを通じて税務調査や税務署の雰囲気を理解していただき、税務調査を受ける際の予備知識になれば非常に嬉しく思う。

  1. 税務調査官はモノを売らないセールスマン
  2. 税務署の事業(事務)年度は7月から翌年6月
  3. 赤字会社には税務調査は来ないのか?
  4. お土産は逆効果!
  5. 昼食とコーヒー
  6. 税務署(調査部門)も高齢化!?参考 税務署に質問する際の注意事項

 

1. 税務調査官はモノを売らないセールスマン

税務調査には常に「数字」がついてまわる。公務員にも関わらず結果(増差税額等)を気にする税務調査官が大半であることから、税務調査官のことを「モノを売らないセールスマン」と表現する者もいる。

税務調査の基本は性悪説

税務調査は「正直に申告している者は稀で、大半の者が税金を少なく申告している」という性悪説を基本として実施されている。
本来なら税務調査で申告是認(追徴なし)で終わることは、自主申告納税制度にとって歓迎すべきことだ。しかし大半の税務調査官が申告是認(問題なし)を嫌がっている。

 

2. 税務署の事業(事務)年度は7月から翌年6月

税務署の事業(事務)年度は7月1日から翌年6月30日だが、人事異動が7月10日であり、7月10日が実質的なスタートとなる。
7月から年末までは数字(増差税額等)を上げることを目標として、確定申告終了後から事業年度末までが、計画した調査処理件数の達成を目標としている。

期限に追われる税務調査官

基本的にはよっぽどの大口事案(重加算税対象を含む)や困難事案を除いて翌事業年度に繰越さずに事業年度末までに処理しなければならないので、大半の税務調査官が事業年度末は期限に追われている状況である。

 

3. 赤字会社には税務調査は来ないのか?

そんなことは全くない!赤字会社でも税務調査が実施されている。
黒字会社に比べると優先順位は低いが、赤字会社も調査候補としてリストアップされ、税務調査が実施されている。
※当然のことだが、赤字であっても税務調査が行われることを前提に適正申告を心掛けるべきである。

赤字会社の主な調査ポイント

  • 本当に赤字なのか(黒字を不当に利益を圧縮して赤字にしていないか)
  • 消費税及び源泉所得税、印紙税の課税漏れはないか
  • 資料情報収集

 

4. 「お土産」は逆効果!

税務調査での「お土産」とは?

予め税務調査で否認され、修正申告をする項目を用意しておくことを俗に「お土産」という。例えば、数十万円の期末売上の帳端分の計上漏れや期末棚卸計上漏れなどである。

なぜ「お土産」が必要と思ってしまうのか

申告の内容に何も問題がない場合、徹底的に再調査され調査時間が長引いたりするのではと考えてしまう。だから調査をスムーズに終了させるには「お土産」が効果的なのではないか……というのは自然な結論に思えるかもしれない。

「お土産」は逆効果!

確かに税務調査官としては、問題なしよりも修正事項があったほうがよい。しかし、税務調査は税法に則っている以上、法的に問題がない場合は申告是認で調査終了するのは当然である。むしろ「お土産」を用意した場合、税務調査官は他に大きな問題点があるのではないかと疑われる可能性が高い。むしろ逆効果である。

 

5. 昼食とコーヒー

調査当日の税務調査官への昼食は準備すべきか?

調査当日の昼食は準備すべきではない。
税務調査官は、調査先で昼食の提供を受けてはならないと上司から厳しく指導されており、昼食を準備していたとしても食べることはない。

コーヒーやお茶については?

コーヒーやお茶を提供することは、通常の接遇の範囲内であり問題はない。

 

6. 税務署(調査部門)も高齢化!?

税務署(調査部門)は上席調査官だらけ

税務署には民間会社のように課長、係長などの名称の役職はなく、調査部門(課)は統括官(課長級)、上席調査官(係長級)、調査官(主任級)、事務官(一般職員)で6~8名程度で構成されているが、一番多いのが上席調査官クラスである。
※職制の詳細については「元税務調査官が語る「税務署の組織力その1」」を参照のこと

上席調査官が末席の部門(課)もある!?

上席調査官は係長級であり、通常であれば部門内で統括官(課長級)を補佐する立場であるが、上席調査官が末席を務める高齢の部門(課)もある。

 

参考 税務署に質問する際の注意事項

税務署に電話等で質問した際は、必ず回答者の名前と日時は記録しておく。
税務署員も人間であり、誤った回答をする可能性がゼロとは断言できない。
回答者の名前と日時を記録しておき、後日、誤った回答を参考に処理して問題になった場合は、税務署にその旨を説明するとともに言い分を主張するためだ。