元税務調査官が語る「知られざる調査官の日常」

税務調査官は調査対象の会社を訪問して行う税務調査を主な仕事としている。しかしそれ以外にも様々な方法によって対象を調査し、隙をうかがっているのだ。そんな彼らの日常を今回は紹介する。

  • いろいろな調査
  • 休日も税務調査官の内偵調査に要注意
  • あの資料を収集せよ!
  • 税務調査官の申告書審査

さまざまな税務調査

税務調査官は現場での税務調査を効率よく実施するために、準備調査の段階で内偵や外観調査を行うケースがある。

(1)内偵調査

飲食店や小売店など不特定の者に主に現金で販売する店に、税務調査官が客を装って行う調査である。税務調査を実施する前に行われる。

確認項目としては、レジ管理がされている場合はレジ打ちの有無、客数、客単価、従業員数である。

内偵調査によって把握した事項については、例えば次のように検討される。

  • 内偵調査で支払った金額が売上に計上されているか
  • 内偵調査時に把握した客単価と客数から想定した売上と比べて売上計上額は適正か
  • 内偵調査時で確認した従業員数に比べて人件費計上は適正であるか

※飲食店や小売店等の現金商売の場合、帳簿調査のみでは売上が適正に計上されているか確認するのが難しい。そこで税務調査を実施する前に内偵調査での確認が重要となるのである。

(2)外観調査

税務調査実施前に、社長の自宅や会社事務所など、土地保有の場合は土地の使用状況を事前に確認する調査である。

外観調査によって、例えば以下のような事項を把握することができる

1. 社長の自宅に修繕した跡が確認できたケース

  • 会社の修繕費など損金として計上していないか

2. 会社の事務所等の外に自動販売機が設置されているケース

  • 自動販売機の設置収入が雑収入などとして益金計上されているか

3. 更地を駐車場としてしているケース

  • 駐車場収入が雑収入などとして益金計上されているか

※訪問調査の日数は限られているため、事前にこうした外観調査等を行いより多くの情報を得る必要がある。

休日も税務調査官の内偵調査に要注意

土日や祝日などの休日には税務署も閉庁しており税務調査官も休みをとる。ならば休日なら売上の一部を除外しても内偵調査でバレることはないと思えてしまうが、それは大きな間違いである。税務調査官の中には休日を利用して飲食店や小売店などの内偵調査を行う者もいるのだ。

税務調査官という人種は、休日といっても調査を忘れてオフ状態にするのが苦手な者が多い。時間に余裕があれば、プライベートの時間においても内偵調査や外観調査を行っている者がいるのが現実である。

  • 税務署が休日でノーマークだからと油断してレジ打ちをしていなかったら、そこには私服でお客になりきった税務調査官がいるかもしれない。

あの資料を収集せよ!

税務調査官の仕事は、納税者が適正に申告しているかの確認を行う税務調査が中心だが、納税者ごとの資料情報の収集・蓄積も重要な仕事である。とくに収入の脱漏の可能性がある取引の資料収集は重要である。

リベート取引資料
  •  得意先に対して、売上に関するリベート(割戻)支払がある場合は、資料収集が行われる可能性が非常に高い。

※特にリベートの支払い方法が得意先の役員等の個人預金口座への振込や現金での支払いとなっているケースでは、リベートを受け取る側の収入除外が行われることが多いため、調査官も注目する。

現金支出に関する資料
  • 現金取引の場合は、受け取る側の収入除外が容易であるため、資料収集が行われる可能性が非常に高い。
飲食費に関する資料
  • 飲食店は現金商売であり、売上計上が適正かどうか確認が困難なため、より多くの現金売上の資料情報を蓄積する必要がある。税務調査官は税務調査において、出来るだけ多くの飲食費に関する資料収集を行うように上司から指示されている。

税務調査官の申告書審査

税務調査を実施されなかった法人の申告書については、税務調査官が署内にて申告書審査を行い、問題がある場合は、後日、税務調査が実施される。

※申告書審査時に申告書の勘定科目内訳書から資料収集を行う。例えば、地代家賃・貸付金・借入金・売掛金・買掛金などから審査を行う。