元税務調査官が語る!税務調査の次の一手「反面調査&連携調査」

税務調査は主に調査先の事務所等で実施される。しかしそれ以外に必要に応じて「反面調査」「連携調査」が行われることもある。今回はその内容や手順についてご紹介しよう。
また2015年秋から導入された「マイナンバー制度」について、これが税務署の業情報収集能力をいかに強化するのか纏めてみた。これから税務調査対策を行う上での参考にされたい。

  1. 反面調査
  2. 連携調査
  3. 元税務調査官からの一言
    参考…強化される税務署の情報力

1. 反面調査

反面調査とは?

事実関係の確認が調査先の資料・面談だけでは困難と考えられる場合、取引先や銀行に臨場して行う確認調査のこと。
※反面調査は調査先に連絡なしで行われるケースが多い。

反面調査の事例……

製造業を営むA社は今期(3月31日決算)の業績が好調で、例年以上の所得計上が見込まれた。
社長のBさんは仕事熱心で真面目な性格だが、納税額を少しでも減らして今後の事業資金に残したいという気持ちが先走ってしまい、悪いことと思いながらも、ふと悪知恵を使ってしまった。
Bさんの手口は、今期の売上げに計上すべき3月30日納品のC社に対する売上金額の数百万円を翌期(4月1日以降)に計上する手口である。納品書控(納品日付3月30日)を破棄して納品日付を4月15日とした納品書控を仮装作成するとともに請求書控も仮装作成を行った。

その後……
後日、A社の税務調査が行われ、税務署の担当調査官は売上の期末計上について納品書控からチェックしたところ、次の点に疑問を感じた。

  • C社に対する4月15日納品の売上代金入金が4月30日であること。
  • 納品書控の納品番号は連番であるが、3月29日~3月30日までの納品書控に欠番(破棄)があるのが確認された。

担当調査官は、社長のBさんに対し、C社の4月15日納品売上について細かく質問するとともに、C社に対する反面調査が必要であると判断し、帰署後、統括官(課長級)に復命して了解を得た。

担当調査官がC社に反面調査したとろ、B社が発行した納品日付が3月30日の納品書を把握するとともに、仮装前の請求書も把握した。

担当調査官がC社で把握した事実をもとにBさんを厳しく追及したところ、観念したBさんはC社の3月30日納品の売上を翌期の売上に仮装した事実を認めた。

(その結果)
当然のことだが追徴税額は重加算税(本税の35%)対象となり、C社にも迷惑をかけてしまった。

 

2. 連携調査

連携調査とは?

同族関係にある会社同士の税務調査や取引関係の解明が困難とされる会社の調査について、関係会社とあわせて同時期もしくは直前直後に税務調査を行うこと。調査担当者同士で互いに調査情報を共有することによって、調査効率を高めて全容解明を行うことを目的とした調査である。

連携調査の事例……

A社(3月決算)は、古くから親しいB社(6月決算)に対する平成25年3月25日納品の売上を平成25年4月分の売上にすることによって平成25年3月期の売上を除外し、利益調整を行っていた。
B社としては6月決算で自社には影響がないため、A社に依頼されたとおり、平成25年3月25日の納品日を平成25年4月10日に改竄した納品書をA社に発行した。

その後…
A社の税務調査が行われたが、前回調査時の調査記録において「次回調査時においては、連携調査が有効と思われる」との記述があったため、B社の所轄税務署に依頼して、B社の税務調査もA社の税務調査と同時期に実施することになった。

A社の担当調査官は、B社に対する平成25年4月10の納品売上の代金回収日が平成25年4月30日であることに不審に思ったため、B社の担当調査官に取引の解明を要請した。
B社の担当調査官が取引状況の詳細を確認したところ、A社から仕入れた商品をB社が平成25年3月30日にC社に納品している事実を把握した。それをもとに社長及び経理担当者を厳しく質問調査した結果、A社に依頼されて、平成25年3月25日の納品日付を平成25年4月10日に改竄した納品書を発行した事実を把握した。
B社の担当調査官から調査の詳細について連絡をうけたA社の担当調査官は、その情報をもとにA社の社長及び経理担当者に質問調査したところ、B社に対する売上を、翌期に計上する手口によって除外し利益調整していた事実を認めた。

(その結果)
追徴税額は重加算税(本税の35%)となり、取引先のB社も徹底的に調査された。

 

3. 元税務調査官からの一言

反面調査や連携調査が行われた取引先には、時間も含めて迷惑をかけてしまうとともに信用問題にも関わることもある。

参考……強化される税務署の情報力

マイナンバーの紐付きで他官庁の情報を把握
今までは調査時に必要性が発生した場合に他官庁に情報提供を依頼してきたが、マイナンバー制度導入後は、調査先の選定段階で他官庁の情報を把握できるので、より効率的で且つ的確な調査選定ができるようになる。

平成30年から預金口座にもマイナンバー制度が導入される。
預金口座状況の全容把握ができ、預金に関する取引の内容把握も容易となる。
※当初はマイナンバーの付番は任意だが3年後を目途に促進の措置が行われる予定。

任意ということで預金口座のマイナンバーを付番しなかったら?

付番しないということは、それなりの理由があるのではないかと疑われる可能性が高まる。