元税務調査官が語る「税務署の組織力 その1」

今回は、税務調査において守る側の経理担当者が知っておくべき税務署の組織力と情報収集能力の凄さについてまとめてみた。
後半では、税務署の職制についても紹介しよう。

  • 税務署という組織
  • 税務署の情報収集力
  • 反面調査は恐い!
  • 税務署の職制

税務署という組織

税務署は全国展開している「国税庁」という大組織の中の一支店だ。また日本国株式会社の一員であり、他官庁や市町村とも連携している。税務調査は担当調査官のみで行われるのではなく、全国展開している国税庁という大組織で行われることを前提にして税務調査に対応しなければならない。

税務署組織図

税務署の情報収集力

税務署の絶対的な強みは、その強大な情報収集能力にある。

会社や個人事業者は、事業をするうえで得意先や仕入先と取引する。当然得意先や仕入先も税務申告を行っており、時には税務調査を受けることもあるだろう。
その申告や税務調査の結果をもとに、取引内容は資料化され納税者ごとに情報が蓄積される。

税務署や上部組織の国税局には専門の資料収集担当者がいる。彼らは金融機関において納税者の預金状況を資料化(会社の場合は代表者及びその家族、主な従業員を含む)したり、有効な資料収集ができると想定される会社には、税務調査時に資料収集担当が同行することによって有効な資料収集を行う。

また、インターネット取引にも目を光らせており、他官庁との連携も含めてあらゆる方法で資料収集は行われている。

調査官が税務調査を行う際は、資料情報を携行していることを忘れてはいけない。

反面調査は恐い!

反面調査とは、調査先のみでは事実関係の確認が困難な場合、調査官が取引先や銀行に臨場して事実確認を行う調査のことだ。参考に反面調査に関する事例を紹介しましょう。

<調査事例>

(株)A社は、取引の一部を会社の収益に計上せずに社長の個人預金口座上で行う方法で、簿外取引による売上除外を行っていた。

*仕入商品の支払いも社長の個人預金口座で決済しているため、帳簿調査だけではバレにくい手口だ。

後日、(株)A社の税務調査が行われた。税務署の調査官は資料情報から、簿外取引による売上除外が濃厚であると判断。簿外取引の個人預金口座のある銀行だけではなく、取引先(簿外取引)にも反面調査を実施した。

その結果、簿外取引のすべてがバレ、当然のことだが追徴税額部分は重加算税(本税の35%)の対象となり、取引先にも迷惑をかけてしまった。

反面調査は、得意先や仕入先に時間を含めて迷惑をかけるとともに、信用問題にも関わることもあるので注意が必要だ。

税務署(調査部門)の職制

税務署には民間会社のように課長、係長などの名称の役職はなく、独特な名称の役職がある。

税務署職制

職制について

◇統括国税調査官

税務署の課長級  調査先の選定、調査担当者の復命管理

*税務調査折衝の窓口責任者
年齢幅は40代前半~60歳前後

◇上席国税調査官

税務署の係長級  調査担当者で若手職員の指導にも当たる。

*困難調査事案を担当したりもする。
年齢幅は35歳前後~60歳前後

◇国税調査官

税務署の主任級  調査担当者
*年齢幅は20代後半~30代後半

◇事務官

税務署の一般職員  調査担当者
*年齢幅は20歳前後~30歳前後

◇特別国税調査官

税務署の副署長・課長級
*税務署所管(資本金1億円未満が大部分)の中で規模の大きい会社の調査を担当
年齢幅は40代後半~60歳前後