元税務調査官が語る「印紙税のポイント」

収入印紙貼付の要・不要については時に混乱することがあり、税務調査においても貼付漏れがよく指摘される。今回は印紙税調査の経験をもとに、印紙税で誤りやすい事項をまとめてみた。多量に作成する文書については、印紙税の負担が相当額になるため、是非参考にされたい。

  1. 注文書が契約書になるケース
  2. 領収証(第17号文書)で誤りやすいケース
  3. 金銭消費貸借契約書(第1の3号文書)の収入印紙貼付漏れが多いケース
  4. 不動産業者の収入印紙貼付漏れが多いケース
  5. 修理品の承り票・引受票等で、請負に関する契約書(2号文書)なるケース
  6. 仮契約書・仮文書等について
    参考)取引先から収入印紙貼付漏れの領収証を交付された場合

 

1. 注文書が契約書になるケース

下請等に提出する注文書についても契約書になるケースがある。
申込書及び注文書等などの文書は、原則的には契約書に該当しないが、次のケースは契約を証明する目的で作成された文書として契約書になり、課税文書に該当する場合は、印紙税が課税される。

  1. 契約当事者の間の基本契約書、規則又は約款等に基づく申込みであることが記載されていて、一方の申込みにより自動的に契約が成立することとなっている場合における当該申込書等。
    ただし、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものを除く。
  2. 見積書その他の契約の相手方当事者の作成した文書等の基づく申込みであることが記載されている当該申込書等。
    ただし、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものを除く。
  3. 契約当事者双方の署名又は押印があるもの。

参考……印紙税基本通達21条(申込書等と称された文書の取り扱い)

 

2. 領収証(第17号文書)で誤りやすいケース

  • 5万円の「領収書」を非課税と勘違いしていた。
    →「領収証」の場合は5万円未満が非課税で、5万円の場合は税額が200円。
  • 領収証の代わりに「請求書」や「納品書」などに「領収済」「代済」などど記入するケースがあるが、この場合は領収証(第17号文書)に該当する。
  • 「レシート」は、収入印紙が貼付漏れになっているケースが多い。

 

3. 金銭消費貸借契約書(第1の3号文書)の収入貼付漏れが多いケース

  • 同族会社間の金銭消費貸借契約書の収入印紙貼付漏れが多い
  • 役員と会社間の金銭消費貸借契約書の収入印紙貼付漏れが多い

 

4. 不動産業者の収入印紙貼付漏れが多いケース

「不動産売渡証書」なども「不動産の譲渡に関する契約書」(第1-1号文書)に該当するが、収入印紙貼付漏れになっているケースが多い。

 

5. 修理品の承り票・引受票等で、請負に関する契約書(2号文書)なるケース

請負に関する契約書(2号文書)に該当するケース

  1. 承り票、引受票と称するもの又は受託文言の記載のあるもの
  2. 修理票、引換証、預り証、受取書、整理券等と証するもので、仕事の内容(修理、加工箇所、方法等)、契約金額、期日又は期限のいずれか1以上の事項の記載があるもの

注意しよう
出来上り予定日は、期日又は期限として取り扱わない。
記載金額が1万円未満及び記載金額(契約金額)1万円未満と記載されているものは非課税。
保証期間中の修理等無償契約である場合において、文書上その旨が明らかにされているものは不課税。

 

6. 仮契約書・仮文書等について

正式文書を作成する前段階において、作成される仮契約書・仮文書等であっても、その文書が課税事項を証明する目的で作成されたものであるときは、課税文書になる。
※印紙税法基本通達第58条

 

参考) 取引先から収入印紙貼付漏れの領収証を交付された場合

取引先から交付された領収証に収入印紙が貼付漏れになっていても、納税義務者は領収証を発行した取引先であり、収入印紙は貼付する必要はない。
納税義務者でないので税務調査にて追徴されることはないが、税務署の調査官が資料情報収集を行うケースがある。