元税務調査官が語る!!法人税務調査官の年間スケジュール

今回は経理担当者の気になるところ、税務署の法人課税部門の調査官は1年をどのようなスケジュールで過ごしているのか、元税務調査官である前原税理士に質問していきたいと思います。

・税務署の事業(事務)年度は7月から翌年6月
・本当のスタートは、人事異動日の7月10日
・7月後半から税務調査開始!!
・年末までが勝負?
・確定申告期間は申告相談会場の応援
・3月後半からは、調査件数のノルマ達成に猛ダッシュ!!
・すっきりした気分で事業年度終了!!

税務署の事業(事務)年度は7月から翌年6月

経理担当者
「官公庁の会計年度は4月から翌年3月ですが、税務署も同じですか?」

前原税理士
「税務署の事業(事務)年度は7月1日から翌年6月30日です。」

経理担当者
「7月1日から新メンバーで1年間のスタートですか?」

前原税理士
「事業(事務)年度の開始は7月1日ですが、人事異動が7月10日ですので本当のスタートは7月10日からです・・・」

経理担当者
「7月1日から7月9日までの期間はどんな事務を行うのですか?」

前原税理士
「転勤する者は引継関係の事務が中心となります。転勤しない者は、部内書類の整理の事務を中心に、7月後半から実施する税務調査の事案選定なども行います。」

本当のスタートは人事異動日の7月10日

前原税理士
「7月10日の定期異動の日に税務署の部門編成が行われ、遠方からの転勤者を除いて部門の新メンバーが揃います。」

経理担当者
「やっぱり『今からスタートだ』というとワクワクしますか?」

前原税理士
「最初は、『今年こそは最高の事務年度にするぞ』と意気込みますね!!最高の事務年度とは、数字(増差税額等)を上げることですけど(笑)」

経理担当者
「最初の事務としては何をするのですか?」

前原税理士
「税務調査の事案選定と準備調査です。事案選定は既に選定した事案の見直しと新たに追加分を選びます。」

7月後半から税務調査開始!!

経理担当者
「それでは税務調査は、いつごろからスタートしますか。」

前原税理士
「7月20日前後から税務調査を開始します。」

経理担当者
「事務年度最初の事案は気合が入りますか?」

前原税理士
「もちろんです!!最初が肝心ですので、数字(増差税額等)が多く見込める事案を選定します。最初の調査事案が申告是認(問題なし)の場合は気分的にも、すごく落ち込みますよ(笑)」

年末までが勝負?

前原税理士
「税務調査官の大半は、年末までが勝負だと思っています。」

経理担当者
「えっ!?年末までが勝負ですか?」

前原税理士
「税務調査官の勤務評定の基準日は4月1日ですが、年末までの税務調査事績が勤務評定の大部分を締めると言われています。」

経理担当者
「大変ですね!」

前原税理士
「年末と言っても税務調査が行われる期間は12月前半までですので、調査日数を多めに費やしても、数字(増差税額等)の見込める税務調査を行います。」

経理担当者
「他の税務調査官の調査応援もあるのですか?」

前原税理士
「もちろんあります。税務調査の中には、法人の規模や想定される問題点などで、一人で行うのが困難な調査事案もありますので、同じ部門の同僚に応援を依頼したりすることもありますし、同僚の税務調査の応援を行うこともあります。」

経理担当者
「スケジュール的には、かなりハードですね。」

前原税理士
「自分の調査+調査応援ですので、本当にハードです。」

確定申告期間は申告相談会場の応援

経理担当者
「所得税の確定申告の応援などもあるのですか?」

前原税理士
「法人課税部門の調査官は、確定申告期間は申告相談会場の応援事務があります。大阪市内の税務署の場合は、応援日数が2日程度の署が多いですが、地方の税務署の場合は、応援日数が10日前後の署が大部分です。」

3月後半からは、調査件数のノルマ達成に猛ダッシュ!!

経理担当者
「いよいよ税務調査開始ですね!」

前原税理士
「確定申告が終われば、事務年度終了に向けて猛ダッシュで税務調査を行っていきます。通常の場合は、年末までが数字(増差税額等)重視で調査日数も相当費やしていますので、処理しなけれがならない税務調査の件数は相当残っています。法人課税部門の税務調査官の事務年度内に処理しなければならない調査件数は一人当たり30件前後ですが、3月後半時点で、未処理の調査件数が10件以上ある税務調査官が大部分だと思います。調査件数のノルマ達成は絶対ですので、短期間で終了できる調査事案を中心に税務調査を実施します。」

すっきりした気分で事業年度終了

経理担当者
「今までの内容を振り返りますと、年末までの目標が数字(増差税額等)を上げることで、確定期間終了後の目標は調査処理件数の達成ということですね。」

前原税理士
「そのとおりです。税務調査を実施できる期間は6月の第1週目ぐらいまで。遅くとも6月20日前後までに調査処理を終了しなければなりません。基本的にはよっぽどの大口事案(重加算税対象を含む)や困難事案を除いて来事業年度に繰越すことが許されませんので大変ですよ(笑)」

経理担当者
「今回知り得た情報を、これからの税務調査対応の参考にしたいと思います。ありがとうございました。」