税務調査でこういう申告書は狙われる?申告書審査について

税務署はどのようにして調査先を決めているのか。その大きな部分を占める「申告書」の審査について、どのような内容の申告書が「狙われやすい」のか。今回はその詳細を紹介するとともに、守る側の経理担当者としてどのような対策が可能なのかも説明している。ぜひご一読いただきたい。

  1. これが調査選定!
  2. 申告書審査はこうして実施される!
  3. こういう申告書が狙われる!
  4. 申告書作成時の税務署対策

 

1. これが調査選定!

基本的に税務調査の対象となるのは問題点(追徴税額)がありそうな会社であり、以下の事項を総合的に勘案して決定される。

前回調査からの経過年数

前回調査または設立日から3期(年)以上経過している会社が対象となる可能性が高い。しかし申告においての異常計数が多い会社や資料情報があるため早く調査を実施しなければならない会社においては、2期(年)あるいは1期(年)が経過した時点でも税務調査実施の候補に選ばれるケースがある。

申告においての異常計数が目立つ会社

例えば、前期に比べて売上が増加しているにもかかわらず、営業利益や申告所得が減少している会社や、例年に比べて多額の経費計上がある企業などの異常計数が目立つ会社は、税務調査実施の候補に選ばれる。

資料情報がある会社

税務署は国税庁という大組織の中の1支店なので、全国の企業に対する資料情報の蓄積がある。その中で脱税行為(重加算税対象)など問題点のある可能性が高い企業については、税務調査実施の候補に選ばれる。

前回調査で脱税行為(重加算税対象)を行っていた会社

前回調査で脱税行為(重加算税対象)を行っていた会社は、また同じ誤ちを繰り返す可能性が高い。また是正状況についても確認する必要があるので、税務調査実施の候補に選ばれる。

長期未接触法人

申告においての異常計数もなく、問題のある資料情報もない企業については、通常は調査候補からは外れる。しかし前回調査から5期(年)以上経過しており、ある程度の売上金額や申告所得がある企業は「定期検診」という意味合いで税務調査実施の候補に選ばれるケースがある。

 

2. 申告書審査はこうして実施される!

申告書審査は調査部門の統括官(課長級)を中心に実施される

申告書審査は調査選定の中で最重要作業であるため、調査選定の担当者である統括官が中心となり、申告書が提出された都度、申告書審査を実施している。

過去の申告状況との対比及び資料情報との照合を行う

過去の申告状況と対比させながら異常計数の有無について検討するとともに、蓄積された資料情報との照合を行う。

 

3. こういう申告書が狙われる!

3-1. 過去の申告状況との対比

  • 売上総利益率や営業利益率等に異常計数がある。
    →売上除外や架空原価等、期末勘定の利益調整が想定される。
  • 今期に無くなっている預金口座がある。
    →預金口座が簿外になっている可能性がある。
  • 過去数年において期末残高が同額の買掛金、未払金等がある。
    →過去の年度において架空の買掛金等(原価等)を計上した可能性がある。
  • 過去の申告において計上があり、今期計上のない雑収入(スクラップ売却収入など)がある。
    →収入除外の可能性がある。
  • 役員借入金が大きく増加している。
    →役員借入金を相手勘定とした売上除外、および架空原価等の可能性がある。
  • 例年に比べて支出額が多い経費がある。
    →架空計上および損金性に問題がある可能性がある。

3-2.申告書の記載内容

  • 勘定科目内訳明細書について、大部分を「その他」でまとめて記載している。
    →例えば売掛金明細書で売掛先が50件程度あるにもかかわらず、個別には5件程度しか記載せずに残りを「その他」にまとめて記載している場合は、詳細記載できない理由があるのではないかと誤解される可能性がある。
  • 期首に棚卸資産計上があって期末棚卸資産の計上がない。
    →期末棚卸資産計上漏れになっている可能性がある。
  • 役員等への貸付金があるにも関わらず、利息収入がない。
    →利息収入の計上漏れが想定される。
  • 地代家賃明細書に賃借期間の記載がない。
    →短期前払費用も含めて損金性の適正が不明である。
  • 多額の売上値引き・返品が計上されている。
    →利益調整目的で計上している可能性がある。

 

4. 申告書作成時の税務署対策

申告内容に異常計数がある場合

申告書の添付書類である勘定科目内訳明細書の備考欄及び事業概況説明書の備考欄に、異常計数の理由等を詳細に記載する。

イレギュラーなケースがある場合

イレギュラーなケースは税務署の調査官が最もマークする事項なので、必ず申告書の添付書類である勘定科目内訳明細書の備考欄及び事業概況説明書に、イレギュラーになった理由等を詳細に記入する。

勘定科目内訳明細書は安易に「その他」でまとめるのではなく、できる限り詳細に記載する

詳細記載することによって不明点がなくなり、信憑性が増す。