元税務調査官が語る「日常業務の中の税務調査対策」

今回は守る側の経理担当者が、来る税務調査に備えて日常業務で留意すべき事項について纏めた。
後半は、税務調査当日での注意すべき点を纏めたので順次紹介していこう。

  1. 経理業務の中の税務調査対策
  2. 税務調査当日での注意すべき点

1. 経理業務の中の税務調査対策

1-1 売上計上関係

売上管理を確実にして請求漏れを防ぐ。
納品書や作業日報等の売上関係資料から発行する請求書の内容を確認し、請求漏れによる売上計上漏れを防ぐ。

取引先からの入金時の仕訳処理は確実に行う。
「売上入金」「売掛金の回収」「前受金」など入金の理由については、間違えないように確実に仕訳処理を行う。

決算期末の売上計上について、帳端分の計上漏れがないように注意する。
例えば3月31日決算期で、請求書が3月20日締日の場合は、3月21日~3月31日の売上げを確実に計上するように注意する。

現金で売上代金を受領した場合、その日のうちに現金出納帳に記載するとともに、発行した領収証(控)と売上計上のチェックを行う。
税務署の調査官は、少額で一度きりの未計上でも、その他にもあるのではないかと必ず疑いをもつ。税務調査が長引く可能性があるので、現金売上計上は確実に行う。

1-2 仕入、外注費関係

仕入、外注費関係の証票類の保存は確実に行う。
証票類を紛失した場合は、速やかに支払先に証票類の再発行を依頼する。
※現金支払の場合は領収証等の保存を確実に行う。

支払先からの請求書等の訂正事項が発生した場合は、経理担当者が手書きで訂正するのではなく、支払先に必ず訂正した請求書の再発行を依頼すること。
手書きでの訂正は改竄しているのではないかの誤解を招く恐れがある。

1-3 棚卸計上関係

預け在庫の管理は日常から確実に行う。
預け在庫については計上漏れになりやすいので注意が必要である。

決算期末の積送品の計上について確実に行う。
決算期末において、納品書及び発送伝票等から積送品の有無について把握して計上漏れを防ぐ。

1-4 一般管理費関係

役員等の個人的な支出として誤解されやすい経費は、帳簿等の備考欄等に支出の内容を記載するなどして、税務調査時に説明できるようにしておく。
税務調査ではグレーゾーンになるケースが多いので、経費の使途を明確にすることによって不本意に否認されないための防止策である。

カード支払いの経費を計上する際は、カード支払明細書と支払い時に交付された領収証等を二重に計上しないように注意する。
単純ミスが発生しやすい項目なので、注意が必要である。

社長等の自宅の一部を会社事務所にしている場合は、水道光熱費等の共通費用を適正に按分計算を行う。
税務調査では、費用の按分については確認事項である。

商品券の購入については、使途についての記録を残す。
個人的に使用及び現金に換金したのではないかとの誤解を防ぐため。

旅費精算書及び旅費規定は作成して確実に保管するように。旅費日当の支給に関する証拠書類と旅費計算の計算根拠として、税務調査時に提示が必要となる。

アルバイトなどの雑給関係は勤務状況記録を保存する。
雑給関係においては、勤務状況記録を残すともに、現金支払いの場合は領収証を受領することによって、税務調査時に支出の証明ができるようにする。
※税務調査において、支出の事実を疑問視されないための防止策。

1-5 その他

・経理ミスが発覚してもミスを隠すために請求書、領収書などの証票類を訂正(改ざん)しないように!証票類の改ざんは、仮装隠蔽行為として、重加算税の対象となる。

 

2 税務調査当日での注意すべき点

その1 調査官には挑発的な態度はとらない

調査官も心を持った人間である。挑発的態度をとられれば感情的なることもあり、調査官のヤル気にさらに火がつき税務調査が長引くケースがある

その2 調査官の質問に対しては、回答をコロコロと変えないように!

質問に対して回答をコロコロと変えられると調査官の心情としては信用できなくなる。調査先だけでは事実確認が困難と思われ、取引先が反面調査を受けるケースがある。

その3 調査官との雑談は慎重に。余計なことをしゃべらないこと!

調査官は雑談によって、帳簿等に記載されていない部分の聞き取り調査を行っている。