領収書や請求書のスキャナ保存の要件が緩和!

平成27年度税制改正により、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存法等の特例に関する法律施行規則」(電子帳簿保存法)のスキャナ保存要件の一部が改正されました。
以前から、領収書・請求書・見積書などの書類をスキャナにより保存する法律はありましたが要件がかなり厳しくあまり使い勝手が良いものではありませんでした。
今回の改正によりその要件が大幅に緩和されました。

  1. スキャナ保存の対象となる国税関係書類の範囲が拡大
  2. スキャナ保存の要件が緩和
    ・「業務処理サイクル方式」を採用する場合の要件が緩和されました。
    ・スキャナ保存の際に必要とされていた電子署名が不要になりました。
    ・保存要件を緩和する一方で、国税の納税義務者の適正な履行を確保する観点から、事務処理を適正に行う体制を整えることが要件とされました。
  3. 適時入力方式に係る要件の緩和など
    ・「書類の大きさ情報」の保存が不要になりました。
    ・「カラー階調」による保存が不要になり、白黒階調での保存で認められるようになりました。
  4. 改正の時期

 

1. スキャナ保存の対象となる国税関係書類の範囲が拡大

改正前は、金額が3万円以上の契約書・領収書等はスキャナ保存の対象外でしたが今回の改正で金額の縛りがなくなりました。

≪改正前≫

  • 3万円未満の契約書・領収書等がスキャナ保存の対象

≪改正後≫

  • 金額に関わらず全ての契約書・領収書等がスキャン保存の対象

これにより金額に関わらず全ての契約書・領収書等がスキャナ保存の対象となりました。

 

2. スキャナ保存の要件が緩和

 「業務処理サイクル方式」を採用する場合の要件の緩和されました。

改正前は、業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やか(1週間以内)にスキャナ保存を行う方法を選択している場合は、国税関係帳簿に係る「電磁的記録等による保存制度の承認」が必要でしたが今回の改正で承認を受ける必要がなくなりました。

≪改正前≫

  • 業務処理サイクル方式の場合、国税関係帳簿に係る「電磁的記録等による保存制度の承認」が必要

≪改正後≫

  • 業務処理サイクル方式の場合、国税関係帳簿に係る「電磁的記録等による保存制度の承認」が不要

 

スキャナ保存の際に必要とされていた電子署名が不要になりました。

改正前は、スキャナ保存をする際には電子署名をする必要がありましたが、今回の改正で電子署名が不要になりました。
ただし、電子署名のような電子上のものには限定しませんが、入力を行う人またはその人を直接管理する人に関する情報を確認できるようにしておく必要があります。

≪改正前≫

  • スキャナ保存をする際には、電子署名が必要

≪改正後≫

  • スキャナ保存をする際には、電子署名が不要

 

保存要件を緩和する一方で、国税の納税義務者の適正な履行を確保する観点から、事務処理を適正に行う体制を整えることが要件とされました。

今回の改正でスキャナ保存の要件がかなり緩和されました。
それに伴い事務処理を行う体制を整えることが要件とされています。
具体的には、以下の「適正事務処理要件」を満たす必要があります。

≪適正事務処理要件≫

  • ≪相互牽制≫
    各事務に関する職責をそれぞれ別の者にさせるなど、明確な事務分掌の下に相互にけんせいが機能する事務処理の体制がとられていることが必要。
  • ≪定期的なチェック≫
    事務処理手続きの定期的な(最低限1年に1回以上)検査を行う体制が必要。
  • ≪再発防止策≫
    検査等を通じて問題点が把握された場合に、経営者を含む幹部に不備の内容が速やかに報告されるとともに、原因究明や改善策の検討、必要に応じて手続規程等の見直しがなされる体制が必要。

 

3. 適時入力方式に係る要件の緩和など

「書類の大きさ情報」の保存が不要になりました。

改正前は、見積書などの一般書類をスキャナ保存する際には「書類の大きさ情報」の保存が必要でしたが、今回の改正で保存が不要になりました。

≪改正前≫

  • 「書類の大きさ情報」の保存が必要

≪改正後≫

  • 「書類の大きさ情報」の保存が不要

「カラー階調」による保存が不要になり、白黒階調での保存で認められるようになりました。

改正前は、一般書類をスキャンする際には、「カラー階調」で読み込まなければなりませんでしたが、改正後は白黒階調(グレースケール)での読み込みでも認められるようになりました。

≪改正前≫

  • 「カラー階調」での読み込みのみ可能

≪改正前≫

  • 「白黒階調(グレースケール)」での読み込みも可能

 

4. 改正の時期

今回の改正は、平成27年9月30日以後に申請される分から適用されます。
書類の保管を電子データでの保管に切り替えるには、3ヶ月前の日までに「申請書」を提出する必要があります。

例えば、平成28年6月1日から新たな要件でスキャナ保存を行う場合は、平成28年2月28日までに申請書を提出しなければなりません。

既にスキャナ保存の承認を受けている場合でも、平成27年9月30日以後に「申請書」を提出して承認を受けない場合は、従来の要件で保存をしなければなりません。
改正後の要件でスキャナ保存を行う場合は、「申請書」を再度提出する必要があります。