設備投資をした時に受けられる優遇税制が、今年度からさらに手厚くなっているのはご存知でしょうか?
平成26年1月20日に産業競争力強化法の制定に伴って「生産性向上設備投資促進税制」(以下「本税制」)が新設されました。
”生産性を特に向上させる”と認められた設備投資について、即時償却又は最大5%の税額控除が適用でき、今までに無かった対象範囲も本税制では対象になっています!
また、本税制の創設に伴って、従来からの「中小企業投資促進税制」(以下「中促」)の対象で、さらに”生産性を特に向上させる”(以下の「2.適用要件」を満たす)設備であれば、「中小企業投資促進税制の上乗せ措置」が適用され、さらなる手厚い優遇が受けられることになりました。
よって、設備投資をされた場合は、本税制・中促・中促の上乗せ の3つのどれかに当てはまる可能性があります。3つの制度とも適用期間が平成29年3月31日まで(に取得・事業の用に供すること)となっておりますので、設備投資を検討されている方は、是非チェックしてみてください!
今回は、前編として「生産性向上設備投資促進税制」についてご説明します。
- 制度の概要
- 適用要件
- 取得価格要件
- 対象となる設備
- まとめ
★ 次回の後編では、「中小企業投資促進税制の上乗せ措置」について説明させて頂きます!
1.制度の概要
※「生産等設備投資促進税制」とは別の税制となります。
◎ 概要
生産性(生産活動・販売活動・役務提供活動等)の向上につながる設備投資について、即時償却又は最大5%の税額控除が適用出来る税制措置です。
◎ 対象者
青色申告をしている法人・個人(対象業種に制限なし!非製造業も対象です)
◎ 優遇措置
平成26年1月20日~平成28年3月31日(の間に取得・事業の用に供した場合)
・・・取得価額の5%税額控除(建物及び構築物は3%)又は即時償却
平成28年4月1日~平成29年3月31日(の間に取得・事業の用に供した場合)
・・・取得価額の4%税額控除(建物及び構築物は2%)又は特別償却50%(建物及び構築物は25%)
- 税額控除限度額は当期の法人税額の20%を上限とします。
- 税額控除限度額の繰り越しについては本税制は適用なし
※中小企業投資促進税制においては1年間の繰り越しが認められています - 購入ではなくリースの場合
1.オペレーティングリースは本税制の対象外
2.所有権移転ファイナンスリース取引は税額控除または即時償却、特別償却からの選択
3.所有権移転外ファイナンスリース取引は税額控除のみ利用可能(即時償却、特別償却は利用不可)
※税額控除額は毎年のリース料の5%ではなく、リース資産額の5%となります。
2.適用要件
生産性向上が認められること(以下のAもしくはBと認められる必要があります)
A.先端設備
※工業会等の証明書が必要となります。
最新モデルかつ生産性向上1%以上であることが要件ですが、該当するかどうかは購入者では判断できません。メーカーに該当するかどうかを確認し、証明書発行を依頼して交付してもらうだけなので、以下のBに比べてとても簡単です!
B.生産ラインやオペレーションの改善に資する設備
※導入前に経済産業局の確認書が必要
経済産業局に、この設備を導入することによってこれだけ利益が増加しますという利益計画を提出し、導入前に確認を受ける必要があります。
(提出から約1ヶ月程度かかります)
A.先端設備 と違って、最新モデル等の詳細な基準もなければ、対象設備の範囲限定もありません。
取得価格要件をクリアできれば、様々な設備が対象になり、包括的な投資を対象とすることができます。
※経済産業局の確認は、あくまで利益計画の適正性に対するものであり、本税制の優遇処置を受けられるかどうかを確認するものではありません。
よって、3.取得価格要件 や 4.対象となる設備 で、しっかり要件を確認しましょう!
本税制では、これまで対象設備になったことのない建物や構築物も対象になっており、また、資本的支出(修繕などの原状回復)による投資は本税制では基本的に対象外ですが、この「B.生産ラインやオペレーションの改善に資する設備要件」の「建物」については、修繕などの資本的支出も対象なので、クロス張替工事や床張替工事なども対象となります。
提出書類が多く、手間はかかりますが、増改築などの設備投資をお考えの方は是非チャレンジしてみましょう!
(Bの手続き)
① 「利益計画」を策定します
年平均投資利益率(以下算式)が15%以上(中小企業者等は5%以上)となる利益計画でないといけません。年平均投資利益率は以下の算式で算出いたします。
② 公認会計士、または税理士に確認書を発行してもらいます
③ 経済産業局へ書類を提出
上記②の確認書と設備投資計画書、他に謄本や決算書の写しなどの提出書類があります。
※詳細は経済産業省の生産性向上設備投資促進税制WEBサイトでご確認下さい。
④ 経済産業局から確認書が交付されます
3.取得価格要件
上記の適用要件(A.先端設備 B.生産ラインやオペレーションの改善に資する設備 の要件)のクリアと、さらにこの取得価額要件のクリアが求められます。以下の通り、単品価額だけでなく年度合計額の要件が用意されているものもあります。
※合計額は設備種類単位で判定します。
同じ設備種類単位なら、違う設備を購入しても合計とすることができます。
例)冷蔵庫60万円、検査機器60万円で器具備品の事業年度合計額が120万円。
→要件を満たします。
※補助金を受けた場合
対象となりますが、補助金を控除した額を取得価額とします。
4.対象となる設備

出典:経済産業省WEBサイト(http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/seisanseikojo/setsumeikai140701.pdf)
【設備の修繕等】
資本的支出(既に有する資産の修理・改良のために行った支出)については、建物を除き対象外です。
【対象外となるもの】
以下は対象外となります。
・中古資産
・貸付資産
・海外で使用する設備
・本店・寄宿舎等、事務用品器具備品、福利厚生施設等の生産性に寄与しない設備
5.生産性向上設備投資促進税制 まとめ
いかがでしたでしょうか?
対象範囲が広い「生産性向上設備投資促進税制」。
一見難しそうですが、「A.先端設備」についてはメーカーに確認すればOKですし、「B.生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」については、わからないことは顧問税理士等に是非確認してみて下さい。
次回の後編では、さらに手厚い「中小企業投資促進税制の上乗せ措置」について説明させて頂きます!