消費税の軽減税率ってなに?海外のおもしろ軽減税率まとめ

自民・公明の両党は平成26年度税制改正大綱において、生活必需品の消費税率を抑える軽減税率を、「消費税10%時に導入する」と決定した。今回の記事では、消費税の軽減税率とは?を簡単に説明させて頂き、既に軽減税率を導入している海外の制度をご紹介させて頂こう。

  • 消費税の軽減税率とは
  • 海外のおもしろ軽減税率
    - フランス
    - イギリス
    - ドイツ
    - アメリカ
    - カナダ
  • 消費税軽減税率のまとめ

 

消費税の軽減税率とは

ご存じの通り、消費税は2014年4月に8%に引上げられ、更に2015年10月に10%へ引上げると定められた。このような消費税率の引上げ政策に対して、消費税の増税が与える生活への影響を抑える為に以前から軽減税率の導入が検討されてきた。

この「軽減税率」とは生活必需品等に対して、標準税率より低く設定される税率のことを指す。
生活必需品と言えば食料品・衣類・医療品などだ。

わが国にも導入された場合には、どのような品目に対して軽減税率が適用されるのかで我々の生活にも大きく影響を与えるはずだ。

 

海外の消費税軽減税率

フランスの消費税軽減税率

フランスでは、ぜいたくな食料品については標準税率を課す品目はあるが、原則として食料品には軽減税率を適用している。

標準税率 軽減税率 対象品目
19.6% 7% 旅客輸送、肥料、宿泊施設の利用、外食サービス等
5.5% 書籍、食料品等
2.1% 新聞、雑誌、医療品等
非課税 不動産取引、不動産賃貸、金融・保険、医療、教育、郵便等

 

世界三大珍味

日本での一般的なイメージでは「世界三大珍味」のキャビア・フォアグラ・トリュフについてはすべてがぜいたく品と感じられるだろう…
しかし、フランスではこの「世界三大珍味」の中で異なる取り扱いがされている。

三大珍味

キャビアは標準税率なのに、なぜフォアグラやトリュフは軽減税率を適用しているのか。
これは「世界三大珍味」の中でもキャビアが特別とされているわけではなく、フランスではキャビアは輸入されており、国産のフォアグラ・トリュフを保護する観点から、フォアグラ・トリュフには軽減税率を適用しているのだ。国内産業を保護するための軽減税率だ。

バターとマーガリン

また、フランスではバターとマーガリンにも異なる税率が適用されている。

バタ^マーガ

フランスパンにはバターが合うから当然!ではなく、マーガリンは工場(企業)により生産されているが、バターは酪農家が生産しているため、国内畜産業を保護する観点から軽減税率を適用しているのだ。

チョコレート

バレンタインでの定番であるチョコレート。フランスではこのチョコレートが形を変えると軽減税率の対象となっているのはご存知だろうか。

tyoko

板チョコなどのカカオの含有量の少ないものには軽減税率が適用される。

チョコレートは昔からぜいたく品とされており標準税率が適用されているが、カカオの含有量が50%未満の板チョコなどは生活必需品として軽減税率の対象となるのだ。

他にも、バレエ等のオリジナル作品の公演で140回までは軽減税率の適用など変わった軽減税率もある。

イギリスの消費税軽減税率

イギリスも軽減税率が採用されており有名なものを紹介させて頂こう。

標準税率 軽減税率 対象品目
20% 7% 家庭用燃料及び電力等
0% 食料品、水道水、新聞雑誌、書籍、国内旅客輸送、医療品、居住用建物の建築、障害者用機器等
非課税 土地の譲渡・賃貸、建物の譲渡・賃貸、金融・保険、医療、教育、郵便、福祉等

お持ち帰り商品

イギリスにおいて、軽減税率を適用する食料品で同じお持ち帰り商品であっても異なる税率が設定されている。
まずは、表を見て予想してみよう。

フィッシュ

なぜ、同じようなお持ち帰り商品なのに税率が違うのだろうか。

答えは、温度である。温かい持ち帰り商品は標準税率が設定され、スーパーのお惣菜コーナーにあるひんやりとした商品には軽減税率が適用される。「販売時点で気温より高い温度のもの」には標準税率が適用されるのだ。

※注文に応じて温められる、温められた後その状態を保持してることも条件として追加されている。

お菓子

イギリスでは、アフタヌーンティーにビスケットやケーキを食べる文化があるが、食べるお菓子についても税率は異なる。

keki

イギリスでは食料品は原則的に0%の税率が適用されているが、贅沢品である菓子類に関しては標準税率が適用されている。
しかし、日常的・大衆的な食べ物であるビスケットやケーキには軽減税率が適用されるのだ。

ドイツの消費税の軽減税率

ドイツにおいても軽減税率が採用されている。

標準税率 軽減税率 対象品目
19% 7% 食料品、水道水、新聞雑誌、書籍、旅客輸送、宿泊施設の利用等
非課税 不動産取引、不動産賃貸、金融・保険、医療、教育、郵便等

「いらっしゃいませ!!店内で召し上がりますか?お持ち帰りでしょうか?」この言葉はファーストフード店に行けば間違いなく聞けれるものである。ドイツでは回答次第で、税率が異なってくるので覚えておくといいだろう。

ハンバーガ

同じファーストフードのハンバーガーであっても店内飲食用とお持ち帰り用とで異なる税率が適用されるようだ。店内で食べると「外食」扱いとになり標準税率が適用されるが、テイクアウトすると「食料品」扱いで軽減税率が適用されるためである。

アメリカの消費税の軽減税率

アメリカでは消費税というものはなく、消費税とよく似たもので「小売売上税」というものがある。旅行時に体感したことがあるかもしれないが、アメリカでは州ごとに独自の税制を備えているので、この小売売上税という税率も異なっている。従って、対象商品によっては隣の州で買った方が良いなどの問題点がある。

州により小売売上税の税率が違う事例を紹介しよう。

kutu

ミネソタ州では、隣のシカゴ州と比べて、同じ商品なのに税率が異なっている。他にもにフロリダ州やテキサス州は、出費のかさむ新学期の時期だけ小売売上税を免税とする措置があるようだ。

カナダの消費税の軽減税率

最後に紹介させていただく国はカナダである。
カナダでは連邦付加価値税(GST)や州売上税(州によって異なる)、統一売上税(HST)と呼ばれる税金がある。これらも商品やサービス、使用の目的で購入した有形動産等に課税されている。

GST

標準税率 軽減税率 対象品目
5% 0% 基本的な食材、農産品、処方箋薬、医療機器 など
非課税 中古住宅、ヘルスケアや歯科治療サービスの大部分、子供ケアサービスの一部、教育サービス、金融サービス など

こちらも変わった軽減税率の適用があるので紹介させて頂こう。

ドーナツの個数

店員さん「いらっしゃいませ。ドーナツはいくつご準備致しましょうか?」
次の回答で、標準税率が適用されるのか、軽減税率が適用されるのかが決まる。

ドナツ

カナダでは、ドーナツなどのお菓子について「その場で」すぐに食べるかどうかで異なる税率を設定している。販売個数が少ない場合(5個以下)には、その場で食べる「外食」とみなして標準税率が適用されるの。6個以上で軽減税率が適用されるが、お腹だけでなく財布とも相談して個数を決めることになりそうだ。

消費税軽減税率のまとめ

軽減税率の設定品目は数多くあり、何に対して設定しているのか各国の特徴が出ているものとなっている。

国により様々な思惑があり、生活への影響を配慮するだけでなく、国内産業を保護する目的もあることがご理解いただけたと思う。

日本でも、軽減税率が導入されれば何に対して設定されるのかが注目だ。税制改正大綱では「10%導入時」ということで、実際に軽減税率が設定されるのが消費税10%になる2015年10月なのか、それとも10月以降なのかも注目するところだ。

しかし、経理マンにとっては軽減税率が導入されることの事務負担増が最大の関心ではないだろうか。

※記事中にある税率などは2013年1月現在のもの。