平成27年12月16日に自由民主党、公明党より平成28年度税制改正大綱が公表されました。
デフレ脱却と経済再生を課題として動いてきたこの3年間。経済の「好循環」を確実なものにするため、税制面の支援をしっかり継続するものとしています。
今回は、「平成28年度税制改正大網」のうち、中小企業・個人に対して、特に影響が大きいものを解説させていただきます。
原案は、自民党ホームページより見る事ができます。
- 個人所得課税
①空き家にかかる譲渡所得の特別控除
②医療費控除の特例の創設
③非課税所得の範囲の拡大 - 法人課税
①法人実効税率の引き下げ
②減価償却制度の見直し
③生産性向上設備投資促進税制の廃止
④雇用促進税制の改正及び延長
⑤地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設 - 消費課税
軽減税率制度の導入 - 納税環境の整備
クレジットカード納付制度の創設 - 改正税制に流れについて
1、個人所得課税
①空き家にかかる譲渡所得の特別控除
相続した被相続人の居住用不動産を譲渡した場合、一定の要件を満たすことで3,000万円の特別控除を受ける事が出来ます。
<要件>
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
- 相続開始直前に被相続人以外の居住者がいないこと
- 相続時から3年を経過する日の属する12月31日までに相続すること
- 譲渡の対価が1億円以下であること
- その他一定の要件
平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間での譲渡が適用されます。
②医療費控除の特例の創設
セルフメディケーション(自主服薬)推進のためのスイッチOTC薬控除が創設されます。
健康の維持増進及び疾病予防への一定の取り組みをおこなった方が、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る一定のスイッチOTC医薬品の購入をした場合に、1万2千円を超える金額について控除を受ける事が出来ます。控除限度額は8万8千円です。
※一定の取り組みとは、①特定健康診査 ②予防接種(医師の関与があるものに限る) ③定期健康診断 ④健康診査 ⑤がん検診をいいます。
適用期間は平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間です。
また、現行の医療費控除と併用して適用を受ける事ができないため、どちらか選択する事となります。
③非課税所得の範囲の拡大
●預金利息の所得税の非課税
義務教育学校の児童又は生徒が、その学校の長の指導を受けて導入した預貯金の利子に対して所得税を課さないことになります。小学校及び中学校の児童又は生徒も同様です。
●通勤手当の非課税限度額の引き上げ
現行の非課税限度額月額10万円から15万円まで引き上げられることになります。平成28年1月1日から受ける通勤手当について適用されます。
●学資に充てるための給付される金品の所得税の非課税
通常の給与に加え、学資に充てるために使用者から受けた給付される金品について非課税となります。平成28年4月1日以後に給付される金品について適用されます。
※ただし下記のものは除外されます。
1、法人である使用者から法人の役員に対して給付されるもの
2、法人である使用者から法人の使用人(役員含む)の配偶者又は使用人の特殊関係者に対して給付されるもの
3、個人事業主から個人事業主の営む事業に従事する親族(生計を一にする者は除く)に対して給付されるもの
4、個人事業主から個人事業主の使用人の配偶者又は使用人の特殊関係者に対して給付するもの
2、法人課税
①法人実効税率の引き下げ
法人税の税率(現行 23.9%)については以下のとおり、段階的に引き下げられます。
- 平成28年4月1日以後に開始する事業年度について、23.4%とする
- 平成30年4月1日以後に開始する事業年度について、23.2%とする
今回の法人税率の引き下げにより、法人税の実行税率(現行34.33%)は、平成28年度以降で33.80%、平成30年度以降で33.59%になります。
②減価償却制度の見直し
平成28年4月1日以後に取得する建物と一体的に整備される建物附属設備や構築物・鉱業用の建物の償却の方法について、定率法を廃止し、以下の償却方法が適用されます。(所得税についても同様です)
- 建物附属設備・構築物(鉱業用のこれらの資産を除く)・・・・定額法
- 鉱業用減価償却資産(建物・建物附属設備及び構築物に限る)・・・・定額法又は生産高比例法
③生産性向上設備投資促進税制の廃止
生産性向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度を平成28年3月31の適用期限をもって廃止され、適用期限の延長は実施されません。
④雇用促進税制の改正及び延長
雇用促進税制について適用期限が平成30年3月31日までの期間内に始まる各事業年度まで延長され、また、所得拡大促進税制との併用が可能になります。(所得税についても同様です)
ただし、雇用促進税の対象になる増加雇用者の範囲が、地域雇用開発促進法の同意雇用開発促進地域内にある事業所における無期雇用かつフルタイムの雇用者に限定されます(新規雇用に限るものとし、その事業所の増加雇用者数及び法人雇用者数を上限とします)
また、所得拡大促進税制の対象は、雇用者給与等支給増加額から増加雇用者に対する給与支給額として一定の方法により計算した金額を控除した金額となります。
⑤地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設
地域再生法の改正法の施行の日から平成32年3月31日までの間に、地域創生を推進するうえで効果の高い一定の事業に対して法人が支払った寄付金について、下記の税額控除の適用を受けることができる。
【平成29年3月31日までに開始する事業年度】
- 法人事業税・・・寄付金額の10%を税額控除(法人事業税額の20%が上限)
- 法人道府県民税(法人税割)・・・寄付金額の5%を税額控除(法人道府県民税法人税割額の20%を上限)
- 法人市町村民税(法人税割)・・・寄付金額の15%を税額控除(法人市町村民税法人税割額の 20%を上限)
【平成 29 年4月1日以後に開始する事業年度】
- 法人事業税・・・寄付金額の10%を税額控除(法人事業税額の15%が上限)
- 法人道府県民税(法人税割)・・・寄付金額の2.9%を税額控除(法人道府県民税法人税割額の20%を上限)
- 法人市町村民税(法人税割)・・・寄付金額の17.1%を税額控除(法人市町村民税法人税割額の 20%を上限)
3、消費課税
軽減税率制度
消費税の軽減税率志度が平成29年4月1日から導入されます。あわせて、複数税率制度に対応した仕入税額控除方式としてインボイス制度が平成33年4月1日より導入されます。
軽減税率とは、生活必需品等に対して、標準の税率よりも税率が低く設定されることをいいます。
軽減税率の対象品目と税率は以下のとおりです。
- 飲食料品の譲渡(食事表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類、外食サービスを除く)
- 定期購買契約が締結された週二回以上発行される新聞の譲渡
- 軽減税率は8%(国税 6.24% 地方消費税1.76%)
4、納税環境の整備
クレジットカード納付制度の創設
国税の納付について、インターネットを利用してクレジットカードによる納付が可能となる制度が創設されます。
国税庁長官が指定するクレジットカード会社が納税者から委託を受けた場合、その委託を受けた日に国税に納付があったものとして、延滞税・利子税等に関する規定が適用されます。
この改正は、平成29年1月4日以後に国税の納付を委託する場合について適用されます。
5、税制改正の流れについて
今後の流れについてですが、1月中旬ごろには税制改正法案が国会に提出され、3月にはH28年度税制改正法案が成立・公布。4月1日には施行となるだろうと予想されます。
詳細な情報が集まり次第、随時内容を更新させていただきます。