ソフトウェアの経理処理について、経理の方なら一度は悩んだことがあるのではないでしょうか?
今回は、ソフトウェアの経理処理についてまとめました。
- 会計上、ソフトウェアってどのようなもの?
- 税務上、ソフトウェアって何年で償却するの?
- 人件費もソフトウェアで計上するって本当?
- ソフトウェアの経理処理で間違いやすい5の事例
1.会計上、ソフトウェアってどのようなもの?
ソフトウェアは、法人税法上の定義規定はありません。
租税特別措置法施行令第27条の6第1項や
公認会計士協会による「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」を参考にすると
・コンピューターに一定の仕事を行わせるためのプログラム
・システム仕様書、フローチャート等の関連文書
ということになります。
コンテンツは、ソフトウェアと別個のものですが、経済的・機能的に一体不可分と認められる場合は、一体として取り扱います。
ソフトウェアの製作費は、自社製作or外部購入という取得形態別ではなく、
製作目的別に自社利用or販売目的で区別します。
販売目的ソフトウェアは、さらに、受注製作ソフトウェアと市場販売目的ソフトウェアに区分できます。
2.税務上、ソフトウェアって何年で償却するの?
ソフトウェアは、事業の用に供した時から償却費を計上できます。
取得の日から償却費は計上できません。
耐用年数は、利用目的に応じて定められています。
- 複写して販売するための原本 3年
- その他のもの 5年
- 開発研究用のもの 3年
<減価償却資産の耐用年数に関する省令 別表第三、六>
よって、例えば、自社利用ソフトウェアの耐用年数は、自社製作か外部購入に関わらず、5年になります。ただし、複写して販売するための原本になるものや、開発研究用のものは、3年となります。
3.人件費もソフトウェアで計上するって本当?
自社製作のソフトウェアの取得価額には、人件費や材料費を含めます。
これは、平成12年度の税制改正により、ソウトウェアは無形固定資産と定められたことによります。
この改正により、ソフトウェアの取得に要した費用は、原則資産計上し、
その他の減価償却資産と同様に償却することになりました。
減価償却資産の取得価額については法人税法で下記の定めがあります。
- 自己の建設、製作又は製造に係る減価償却資産
- 当該資産の建設等のために要した原材料費、労務費及び経費の額
- 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額
<法令54①ニ>
そのため、自社製作のソフトウェアの製作原価である人件費は、取得原価として資産計上します。
人件費とは、従業員の給与のみならず、役員報酬も含みます。
役員も実際にソフトウェアの製作に従事している場合は、時間等の合理的な計算で按分して、資産計上することとなります。
4.ソフトウェアの経理処理で間違いやすい5の事例
スマホのアプリを開発をしています。資産計上は必要ですか?
はい。必要です。
販売目的ソフトウェアは「最初に製品化された製品マスター」の完成以後の支出は、「ソフトウェア」の取得価額として資産計上します。
それ以前の支出は、研究開発費として費用計上します。
スマホのアプリを開発をしていて、バージョンアップを公開しました。この開発費用は資産計上ですか?
販売目的ソフトウェアのバージョンアップ費用のうち、簡単な操作性向上や機能追加は資本的支出となり、資産計上になります。
ただし、新製品の製作と同様のバージョンアップは、製品マスター完成まで研究開発費として処理するこができます。
社内用の業務効率改善のためにソフトウェアを製作しました。資産計上は必要ですか?
会計と税務で異なります。
自社利用目的ソフトウェアについては、将来の収益獲得または費用削減が
確実な場合、会計上は、資産計上します。
一方、税務上は、将来の収益獲得または費用削減にならないことが明らかな場合のみ、資産計上しないことができます。
プログラムを組み込んだホームページを業者に作成してもらいました。資産計上は必要ですか?
支払代金のうち、プログラム作成にかかる支出は、ソフトウェアとして資産計上します。
その他のホームページ作成にかかる支出は、広告宣伝費として費用計上します。
法人成りしました。個人事業のときに取得したソフトウェアはどうしたらよいでしょうか?
引継価額は時価になりますが、市場価額にあまり変動がない場合、帳簿価額による引継ぎも認められます。
また、中古資産に該当しますので、原則は、見積耐用年数になります。
ただし、見積りが困難なときは、簡便法によることができます。