平成27年税制改正大綱で中小企業に影響を与えるもの

自民、公明両党は昨年12月30日に、平成27年度税制改正大綱を決定した。

今回は、税制改正大綱の中でも中小企業に影響を与えるものを覆面税理士がわかりやすく解説しよう。

平成27年度税制改正大綱は、安倍政権の経済成長のシナリオを税制からも後押しすることが狙いとして、下記のような内容になっている。

平成27年度税制改正大綱

今回は、平成27年度税制改正大綱のうち、中小企業に特に影響の大きいものを紹介させていただこう。

法人税率引き下げ

今回の法人税改正は、課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる改正となっている。
考え方としては、稼ぐ力のある企業の税負担を軽減することで、企業の収益力の改善に向けた投資や新たな技術開発等への挑戦がより積極的になり、成長につながっていくということである。

法人税率

現行  25.5%(所得金額のうち年800万円以下の部分に対する税率15%)

改正  23.9%(所得金額のうち年800万円以下の部分に対する税率15%)

今回の法人税率の引き下げにより、国・地方を通じた法人実効税率(現行34.62%)は、平成27年度に32.11%になる。

※ 上記の改正は、平成27年4月1日以後に開始する事業年度について適用する。

 

繰越欠損金の控除縮小

繰越欠損金の控除限度額を、次のとおり、段階的に引き下げることになる。
ただし、中小法人等については現行の控除限度額を維持するため、今回の改正では影響なしである。

平成27年4月1日~平成29年3月31日までに開始する事業年度
所得の金額等の100分の65相当額(現行100分の80相当額)

平成29年4月1日以後に開始する事業年度
所得の金額等の100分の50相当額

また、繰越欠損金の繰越期間が10年(現行9年)に延長される。

 

消費税率の引上げ時期

平成27年10月に予定していた消費税率10%への引上げ時期を平成29年4月となる。

景気判断により延期された消費税率引上げであるが、税制改正大綱では、『社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、市場や国際社会からの信認を高めるために財政健全化を着実に進める姿勢を示す観点から、平成29年4月の引上げについては、「景気判断条項」を付さずに確実に実施する。』と述べられており、次の延期はないぞという決意が感じられる。

 

国外からの役務提供に対する消費税

これまでアマゾンやグーグルなどのグローバルIT企業による国境を超えるサービスに消費税が課税されないという問題があった。
例えば、アマゾンであれば本拠地はアメリカにあり、コンテンツを蓄えているサーバーも海外に設置されている。そのため、日本のユーザーが電子書籍を購入しても、消費税の対象外である国外取引となり、電子書籍に消費税はかからなかった。

今回の税制改正大綱では、これに対応するため電子書籍・音楽・広告の配信等の電気回線を介して行われる役務提供を「電気通信役務の提供」と位置づけ改正をしている。

B to C取引の場合

電気通信役務の提供については、役務の提供を受ける者の所在地が国内であれば国内取引として消費税が課税されることになる。
これにより、役務を提供する国外の会社は、消費税を消費者から預かり、納付することになる。

B to B取引の場合(リバースチャージ方式の導入)

通常であれば、役務を提供をする側が消費税を預かり納付するが、リバースチャージ方式の導入により、電気通信役務の提供を受けた国内の事業者が消費税の納税義務を負うことになる。
この支払った消費税は、仕入税額控除の対象となる。(仕入税額控除を受けるためには要件があるため注意が必要である。)

また、電気通信役務の提供のほか、国外事業者による芸能・スポーツ等の役務提供についてもリバースチャージ方式が導入される。

※ 上記の改正は、平成27年10月1日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れ等について適用する。

 

税務関係書類のスキャナ保存制度の見直し

税務調査の証拠となる領収書や契約書をスキャナで読み取って画像データを保存すれば原本を捨てられる制度の要件が緩和された。

  • スキャナ保存が認められる契約書や領収書は3万円未満であるが、この金額要件が廃止。この際、契約書・領収書等については適正な事務所処理を担保する社内規程の整備と実施がスキャナ保存の承認の要件とする。
  • スキャナで読み取る際に必要とされている入力者等の電子署名を不要とし、タイムスタンプを付すこととするとともに入力者等に関する情報の保存を要件とする。
  • スキャナで読み取る際に必要とされているその書類の大きさに関する情報の保存を不要とする。
  • カラーでの保存を不要とし、グレースケールでの保存でも可能。       など

※ 上記の改正は、平成27年9月30日以後に行う承認申請について適用する。

 

税制改正の今後の流れ

今後の流れとしては税制改正案が閣議決定され、国会に提出、4月1日に施行となるであろう。

今後さらに情報が集まり次第、解説させていただく。
税制改正は、実務に影響が大きいため、注目していただく方がいいであろう。