今回は、関連会社間で取引をする際に注意することを覆面税理士が詳しく解説させていただこう。
関連会社間の取引は、
「親会社から子会社にお金貸すんやけど、利息なしでええんやろか?」
「親会社の利益がぎょーさんでてるさかい、子会社からの仕入を高くしといてええんやろか?」
などと、質問を多く受ける項目である。
今回の記事は特に下記のような方々にみていただきたい。
- 自分と自分の親族で100%支配している会社を2社以上もっている。
(もしくは2社目を設立予定) - 上記のような会社で経理をしている。
- 会社ももってないし、経理でもないが関連会社の取引に興味がある。
自分が100%支配している会社間であれば、資産の売買や価格の調整、お金の貸し借りなどの取引を自由に決めることができる。
そのため、利益調整や脱税を行いやすいことや、形式的には2社でも一体として考えることができる場合などがあるため、税制が整備されている。
また、税務調査でもよく見られるポイントである。
- グループ会社に適用される『グループ法人税制』とは?
- 関連会社間で資産の売買をするときに注意すること
- 関連会社間でお金の貸し借りをするときに注意すること
- 関連会社間で共通の経費が発生するときに注意すること
- まとめ
1.グループ会社に適用される『グループ法人税制』とは?
・適用される会社
グループ法人税制は、完全支配関係がある法人間の取引に適用される。
完全支配関係とは、原則として、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接または間接的に保有する場合における法人相互の関係である。
例えば、下記の図のように個人株主X(一の者)にA社とB社が100%支配されているため、A社とB社は完全支配関係となる。
・ グループ法人税制の対象になる場合に適用される税制
対象になる場合にはグループ内の取引に下記のような取扱いを受ける。
- グループ内での資産の譲渡損益の繰延
- グループ内での寄附金の損金不算入・益金不算入
- グループ内の法人からの受取配当等の益金不算入 など
2.関連会社間で資産の売買をするときに注意すること
上の図のように関連会社間で、商品の販売や資産の売買をすることはよくあることである。
このときに注意してほしいのは、その価格である。
関連会社だからといって、時価からかけ離れた価格で売買をすると税務的に不利な取扱いを受ける場合がある。
例えば、A社で利益を上げたくないため、時価の10%程度でB社に販売したとしよう。
その場合には、A社がB社に対して時価との差額90%分の寄附をしていると考えられ、「寄附金の損金不算入」の適用を受け、不利になることがある。
また、下記のような資産の売買についてはグループ法人税制の譲渡損益の繰延が適用されるため、売却をしたA社で売却益も損も出ないという取扱いになる。
- 固定資産
- 土地
- 有価証券(売買目的有価証券を除く)
- 金銭債権
- 繰延資産
なお、譲渡の直前の帳簿価額が1,000万円に満たない資産は除かれる。
3.関連会社間でお金の貸し借りをするときに注意すること
関連会社間でお金の貸し借りはよくあることである。
上の図のように、B社で資金が必要なので、A社の通帳から移動する場合等である。
このときには注意してほしいのは利息である。
関連会社だからとって、無利息で融資している場合には税務的に不利な取扱いを受けることになる。
これも上記の資産の売買と同じように、A社が当然もらうべき対価(利息)をもらっていないため、その経済的利益をB社に寄附したと考えられ、「寄附金の損金不算入」の適用を受け不利になるときがある。
なお、子会社の倒産を防止するためにやむを得ず行われる場合など「寄附金の損金不算入」の適用を受けない場合もある。
4.関連会社間で共通の経費が発生するときに注意すること
関連会社で共通の経費が発生することもある。
特に上の図のようにA社とB社で同じ事務所を使用している場合には、家賃、備品、水道光熱費など共通の経費が発生する。
例えば、A社がすべての費用を負担して、B社は費用を負担していない場合などには、A社からB社に費用分の経済的利益を寄附したと考えられ、「寄附金の損金不算入」の適用を受け不利になるときがある。
そのため、共通の経費がある場合にも使用している面積や従事人数などで合理的に按分する必要がある。
5.関連会社の取引 まとめ
以上、関連会社間の取引で注意することをみてきた。
上記は代表的なものというだけで、その他にも関連会社間の取引であれば注意すべきことが多くある。
基本的には、低額な資産の販売、無利息貸付、共通の経費を請求しないなど、第三者間であれば通常しない取引については特別な取扱いをされる場合が多いので注意が必要である。