税制改正で創設された地方法人税について解説

平成26年税制改正により創設された「地方法人税」は、適用開始が平成26年10月1日以後開始事業年度であることから、平成27年11月末申告期限の法人のほとんどが初めて地方法人税が追加された申告書を目にすることになります。

地方法人税は既に適用が開始していますが、この税金についてご存じない方が多く、知らずに申告をしてしまうと、国税・地方税ともに税額を誤ってしまいます。

実務的にも影響の出るこのタイミングで、地方法人税について、ご説明させて頂きます。

  • 地方法人税の創設
  • 地方法人税とは
  • 法人住民税(法人税割)の税率引下げ
  • 地方法人特別税・法人事業税の税率改正
  • まとめ

地方法人税の創設

地方法人税は、平成26年4月からの消費税率の引上げによって地方消費税が増収になり、ますます地方団体間の財政力の格差が拡大することになります。
そのため、地方団体間の財源の偏在性を是正し、財政力の格差の縮小を図るために地方交付税の財源を確保することを目的として創設されました。
地方法人税は、「地方」という名称が入っていますが国に支払う国税になります。

地方法人税が創設されて、納税者の税負担が増えるのか!?というとそうではありません。

その分、地方税である法人住民税の税率が引下げられるため、納税者の国税・地方税の合計の税負担はほぼ変わりません。
つまり、今まで法人が直接地方団体に支払っていた税金の一部を国に支払い、国がその税金を各地方団体に分配するという流れになります。

 

地方法人税とは

・納税義務者

法人税を納める義務のある法人

・課税事業年度と確定申告

課税事業年度と確定申告は法人税と同じなので、法人税の申告・納税と同時に地方法人税の申告・納税を税務署に行う必要があります。

・税額の計算

法人税額に4.4%の税率を乗じた金額となります。

※外国税額控除を受ける場合に、法人税額を外国税額控除が超える場合には地方法人税についても控除の適用を受けることができます。

・法人税申告書

別表一(一)            別表一(一)次葉
tihou_hojin jiyou

別表一(一)は、下半分が地方法人税の計算の欄に変更になっています。
また、これまでは無かった別表一(一)に次葉が必要になります。
従来の別表一(一)で計算していた項目の一部を別表一(一)次葉で計算する形となります。

法人税申告書様式|国税庁ホームページ

法人税額がない場合であっても地方法人税確定申告書は提出の必要がありますので、「基準法人税額」、「地方法人税額」、「所得地方法人税額」の各欄に「0」と記載して提出して下さい。

・中間申告

平成27年10月1日以後に開始する事業年度において、法人税の中間申告書を提出する必要のある法人は、地方法人税についても中間申告書を提出する必要があります。

法人住民税(法人税割)の税率引下げ

地方法人税が創設され法人税額をベースとした国税が4.4%引き上げられたため、法人税額をベースとして計算する地方税である法人住民税(法人税割)の税率が道府県民税・市町村民税合わせて4.4%下がります。
法人住民税額(法人税割)は、法人税額にそれぞれを税率を乗じて計算されるため、地方法人税(国税)と同じ額の法人住民税(地方税)が下がることになり、実質トータルの納税負担額は変わらないことになります。

《地方税法に基づく標準税率・制限税率》
税率
標準税率が合計17.3%から12.9%と4.4%下がります。
道府県民税申告書(第六号様式)・市町村民税申告書(第二十号様式)の法人税割額の税率を改正後の税率に変更して下さい。

 

地方法人特別税・法人事業税の税率改正

地方法人特別税と法人事業税は元々ある税金ですが地方法人税の創設により、「税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の措置」として平成20年10月1日より施行されていた地方法人特別税の規模が縮小され、法人事業税に復元されることになりました。

地方法人特別税は国税で、都道府県が法人事業税と併せて徴収していた税金です。
地方法人税とは逆に、国が徴収する地方法人特別税の税率を下げて、地方団体が直接徴収する法人事業税の税率を上げることになります。
元々地方法人特別税は、抜本的な地方税改革を行うまでの臨時措置として導入されたものだったので、地方法人税の創設により引き下げられました。

法人事業税の税率が上がり、地方法人特別税の税率は下がります。改正前と改正後のそれぞれの税率の差は大きく違いますが、税額の計算方法が異なるため、結果としては納税額の合計額は改正前とほぼ同額になります。

《地方法人特別税》
法人地方

《法人事業税》

外形標準課税適用法人(所得割)
外形標準適用

外形標準課税不適用の普通法人等の場合(所得割)
事業
税率は、地方税等に基づく標準税率です。各都道府県により税率は異なりますので、各都道府県の税率を確認して下さい。

地方団体の財政の格差を無くすための改正を図で表すと以下のようになります。
無題

まとめ

地方法人税の創設によって、色々な税率が変更になっていますが、全体としては納税者の税負担はほぼ変わりません。
地域間格差を縮小するため、地方税として支払っていた税金を国税として国が徴収し各地域に分配するという流れに変わることになります。

変更された別表一(一)等を使用すること、次葉を作成すること、地方法人税の納付をすること、地方税の税率を変更することに注意して下さい。