元税務調査官が語る「税務調査でマークされる経理処理その1」

税務調査官の人数は限られており、税務調査にはそれほど長い時間を割けるわけではない。当然彼らはよく見るポイントを持っており、調査の際は必ずそこに注目する。今回はそれら重要調査項目になる可能性の高い経理処理について紹介する。

後半は、消費税増税関係の調査ポイントをまとめてみた。

  • 税務調査官は必ず調査ポイントを絞る!?
  • 税務調査でマークされる経理処理
  • 消費税増税関係の調査ポイント

1. 税務調査官は必ず調査ポイントを絞る!?

  • 実際に相手先に訪問して行われる税務調査の日数は会社等の規模によって異なるが、概ね2日間から3日間程度。これでは過去3年間の全ての経理処理等の内容を検討することができないため、税務調査前の準備調査によってポイントを絞るとともに、過去の帳簿調査において、問題が多く発生している経理処理を重要調査項目として税務調査を実施する。

2. 税務調査でマークされる経理処理

2-1. 原価及び経費の架空計上の際によく使われる仕訳333333

原価及び経費勘定の架空計上する際に、多く用いられる仕訳である。
※ラウンド数字(1,000,000円など)や期末計上の場合は、関係証票類の確認調査や聴き取り調査が丹念に行われるケースが多い。

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売上等の収益を計上せずに、貸方の科目を役員借入金にすることによって、利益調整を行っているケースある。
※役員借入金の増減については重要調査項目であり、資金出所等の確認調査が行われる可能性が高い。

2-2. 売上等の前受金処理

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売上等の収益に計上すべきものを、前受金や仮受金に仮装して、利益調整を行っているケースが多い。

2-3. 仮払金の精算

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役員等の仮払金を精算するために、架空経費を計上するケースがある。

・税務調査事例

脱サラしてコンサルタント会社の(株)A社を設立したDさんは、培ってきた人脈を活かして営業活動を行っており会社の業績は好調だった。社員はおらずDさんのみで営業や経理を含めた業務全般を行っていた。
Dさんは営業上必要な時に、会社名義の預金口座から仮払金として現金を出金して取引先の接待を行っていた。しかし忙しさのあまり、日々の仮払金を精算しなかったとともに接待で支出した際の領収証等の保存も悪く、紛失した領収証も多数あったため、決算期末に仮払金の精算を行った結果、数十万円の仮払金が残ってしまった。

Dさんは残ってしまった数十万円の仮払金を精算するために何の根拠もなく架空に旅費を計上して、仮払金を精算する経理処理を行ってしまった。

その後……数年後に(株)A社の税務調査が行われ、仮払金の精算状況を確認していた税務署の担当調査官は、決算期末に証票類のない雑費計上に着目した。Dさんを質問攻めにした結果、観念したDさんは仮払金を精算する目的で雑費を架空計上していた事実を認めた。

その結果……当然のことだが、追徴税額は重加算税対象として課税された。

2-4. 売上値引きの計上

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架空の売上値引きを計上する手法で利益調整を行うケースがある。
※ラウンド数字(1,000,000円など)や期末計上の場合は、関係証票類の確認調査や聴き取り調査が丹念に行われるケースが多い。

⑤決算期末等の赤字取引については、架空計上か否かの検討が行われるケースが多い。

・決算期末の経理処理
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決算期末の経理処理で50万円の損失を発生させることによって利益調整を行って、翌期首の経理処理によって解消させるケース多い。

・翌期首の経理処理
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3. 消費税増税関係の調査ポイント

3-1. 適用開始日(平成26年4月1日)関係

  • 適用開始以後の課税売上を適用開始前の課税売上にすることによって、消費税額を5%にしていないか。
  • 適用開始前の課税仕入を適用開始以後の課税仕入にすることによって、8%の仕入税額控除を行っていないか。

3-2. 経過措置関係

  • 契約締結日が、見積書や注文書等の関係書類を含めた取引内容から指定日(平成25年10月1日)前か否かの検討を行う。
  • 契約締結日以外の経過措置の要件を満たしているか