元税務調査官が語る「税務調査でマークされる経理処理その2」

税務調査官の人数は限られており、税務調査にはそれほど長い時間を割けるわけではない。当然彼らはよく見るポイントを持っており、調査の際は必ずそこに注目する。「税務調査でマークされる経理処理その1」に引き続き重要調査項目になる可能性の高い経理処理について紹介する。

後半では注文書に対する印紙税の取り扱いについて紹介する。

目次

  • 調査ポイントを把握することが、有効な税務調査対策!?
  • 税務調査でマークされる経理処理
  • 注文書に関する印紙税の取扱い

1. 調査ポイントを把握することが、有効な税務調査対策!?

  • これまでに何度も述べてきたが、調査官は必ず税務調査前に準備調査を行って問題がありそうな科目を洗い出す。さらに帳簿調査では、過去の税務調査において、問題が発生していることが多い経理処理を重要調査項目として調査を実施する。守り手(経理担当者)としては、調査ポイントになる項目を出来る限り把握して日常的に備えることが、最も有効な税務調査対策といえる。

2. 税務調査でマークされる経理処理

2-1. 現金過不足

1121212121

調査ポイント

  • 飲食業や小売業などの現金過不足が発生しやすい事業内容なのか。
  • 解明作業は実施したのか。
  • 現金不足分は、役員等が個人的に費消したのが原因ではないか。(とくに多額の現金不足は要注意。)
  • 現金過大分は現金売上げの計上漏れが原因ではないか。

2-2. 資産計上の機械や備品等を取得した時の経理処理

78798978

調査ポイント

  • 実際は、200万円で機械を取得したにもかかわらず、機械100万円、消耗品費50万円、修繕費50万円に分散することによって利益を圧縮していないか。
  • 下取り売却した機械はないか。

2-3. 借入先に対して支払手数料等の支出がある場合

123123123

調査ポイント

  • 借入金返済を支払手数料に科目仮装して利益を圧縮していないか。

2-4. 棚卸資産の評価方法が最終仕入原価法の場合

9899898989898

調査ポイント

  • 恣意的に仕入単価を低くして利益を圧縮していないか。

2-5. 決算期末直前に多額の商品券購入がある場合(3月31日決算)

179179179

調査ポイント

  • 決算期末時点での未使用の商品券はないか。
  • 商品券を換金していないか(使用事績から検討)

2-6. 役員等が引越しを行った場合の引越し時期の経理処理

222222

調査ポイント

  • 個人的な家財道具の購入費用を会社の経費に付け込んでいないか。
  • 個人的な引越し費用を会社の経費に付け込んでいないか。

2-7. 事実関係が不透明な貸付金がある場合

33333

調査ポイント

  • 架空貸付金を計上し、後日貸倒損失を計上することによって利益を圧縮していないか。

3. 注文書に関する印紙税の取扱い

下請けなどに提出する注文書についても契約書になるケースがあるので、注意が必要である。

〇契約書になるケース

申込書及び注文書等などの文書は原則としては契約書に該当しない。しかし次のようなケースは契約を証明する目的で作成された文書として契約書になり、課税文書に該当する場合は、印紙税が課税される。

  • 契約当事者の間の基本契約書、規則又は約款等に基づく申込みであることが記載されていて、一方の申込みにより自動的に契約が成立することとなっている場合における当該申込書等。ただし、契約の相手方当事者が別に請書等成立を証明する文書を作成することが記載されているものを除く。
  • 見積書その他の契約の相手方当事者の作成した文書等の基づく申込みであることが記載されている当該申込書等。ただし、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものを除く。
  • 契約当事者双方の署名又は押印があるもの

参考……印紙税法基本通達第21条