税務調査の「事前通知」から当日までの作業チェックポイントまとめ

税務調査は日程を定める「事前通知」から始まる。常日頃からの準備が重要なのは言うまでもないが、加えて通知から調査当日までにやっておきたい事前準備についてまとめてみた。見落としのないよう、しっかり守りを固めておきたい。

目次

  1. 事前通知について
  2. 事前通知後の税務調査準備
  3. 税務調査前のチェックリスト

 

1. 事前通知について

① 税務調査の日程については、原則、税務署から顧問税理士及び会社に電話にて事前連絡があり調整が行われる。ただし次のようなケースでは事前通知が行われずに「無予告」で税務調査が行われる。

  • 会社が重加算税の対象となる脱税(仮装隠蔽)行為を行っていると想定されるケース
  • 飲食業や小売業など、不特定多数の者と現金決済で商売を行っているケース

なお、申告書提出の際に「税理士法33条の2に定める書面添付」をしていれば、顧問税理士が税務署に出向いて説明する「意見陳述」だけで済むケースもある。
※書面添付の詳細は「元税務調査官がホンネで解説する「書面添付制度」の注意点」を参照

② 事前通知は税務調査の何日前に行われるのか?

  • 事前通知は税務調査開始日の何日前までに行わなければならないなどの具体的な規定はないが、現状としては10日~20日前ぐらいに行われることが多い。

③ 税務署側の調査希望日は変更できるのか?

  • 業務上等のやむを得ない事情で日程の都合がつかない場合は、税務署側と協議して日程変更ができる。

④ 事前通知に際し、調査担当者の氏名・所属官署に加え、臨場予定人数も併せて連絡することとされている。

  • 事前通知を受けた際は、担当調査官の所属する部署と、職名(上席国税調査官あるいは調査官等)さらには担当調査官の経験年数をチェックし、税務調査の規模を想定することに心掛ける。
    ※職名の詳細は「税務署の組織力その1」を参照

 

2. 事前通知後の税務調査準備

税務調査を受ける側の会社側が、税務調査の日までに準備する項目は次のとおりである。

① 事業概況に関する準備

事業概況の事前準備

  • 日常業務の流れを具体的に説明できるようにする。
    ※例えば製造業などは、工場見学を交えながら、製造過程や製品などを説明できるようにする。卸売業などは、取扱商品をパンフレット等で説明できるようにする。
  • 遠隔地取引やイレギュラー取引こそ、時間をかけても調査官に説明できるようにする。
    ※誤解を招いて税務調査が長引いたり反面調査が実施されないようにするための予防策。

現金監査の事前準備

現況調査の事前準備

  • 調査当日に社長及び経理担当者の机、金庫等の中を調べられても大丈夫か。
  • 調査当日にPC(ゴミ箱も)をチェックされても大丈夫か。
    ※現況調査の詳細は「法人の税務調査対策その1」を参照

② 経理処理に関する準備

過去の調査での修正事項及び指導事項の是正状況について説明できるようにする。

  • 調査官にとっては重要調査項目であり、必ず是正状況をチェックする。

売上計上の準備

  • 受注から売上計上までの一連の流れを説明できるようにする。
  • 売上値引きがある場合は、計算根拠も含めて説明できるようにする。

仕入・外注関係の準備

  • 仕入及び外注費に関する証票類は、調査官に提示できるようにする。
  • 従業員から外注先になった者の外注費計上の正当性の説明をできるようにする。

売上や棚卸商品などの主な勘定科目の期末計上について事前に確認する。

  • 調査官にとっては、重要調査項目であり、問題点が発生しやすいため、必ずチェックする。
  • 期末計上の状況によって、その会社の経理状況を判断する調査官もいる。

代表者の個人的費用と勘違いされやすい支出については調査官に説明できるようにする。

  • 不明瞭な部分をなくし、不本意な追徴課税されないための予防策。

 

③ 事前準備において「やってはいけないこと」

経理ミスが発覚してもミスを隠すために請求書、領収証などの証憑類を訂正(改ざん)してはいけない。税務調査で発覚すれば証票類の改ざんは、仮装隠蔽行為として重加算税の対象となる。

 

3. 税務調査前のチェックリスト

税務調査において守る側の経理担当者が事前にチェックすべき項目についてまとめてみたので、調査を受ける前の事前準備に活用してほしい。

帳簿書類の準備(通常は3期分)

  1. 総勘定元帳
  2. 売掛帳及び買掛帳
  3. 現金出納帳
  4. 期末棚卸資産の明細表
  5. 売上の関係書類(見積書、納品書、請求書(控)、領収証(控))
  6. 仕入及び一般管理費の関係書類(請求書、領収証)
  7. 賃金台帳及び源泉徴収関係
  8. 契約書及び議事録

事業概況等

  1. 会社概況や取引状況について正確に説明できますか
  2. 遠隔地取引や単発などのイレギュラーな取引について説明できますか
  3. 現金残高と現金出納帳の帳簿残高は一致しますか
  4. 法人名義の預金通帳等は、会社に保管していますか
  5. 調査当日に社長及び経理担当者の机、金庫等の中を調べられても大丈夫ですか
  6. 調査当日にPC(ごみ箱も)をチェックされても大丈夫ですか
  7. 調査当日に事務所、店舗、工場、倉庫等の実地確認されても大丈夫ですか

売上・雑収入関係

  1. 納品書及び請求書(控)、領収証(控)等から売上が適正に計上されていますか
  2. 期末の売上計上は適正に行われていますか
  3. 受注から売上計上までの一連の流れを説明できますか
  4. 売上の計上基準は明確になっていますか
  5. グループ法人または役員親族間の取引金額は適正ですか
  6. 個人事業者から法人成りの場合、個人時代の預金口座に売上代金が入金されていませんか
  7. 売上値引きがある場合、計算根拠も含めて説明できますか
  8. スクラップ、副産物の売却代金は雑収入に計上されていますか
  9. リベート収入等は雑収入に計上されていますか

仕入・外注関係

  1. 仕入及び外注費に関する証憑類は調査官に提示できる状態ですか
  2. 期末の仕入及び外注費の計上が適正に行われていますか
  3. 紛失した証憑類がある場合、取引内容及び取引先への確認が可能ですか
  4. 仕入値引き等については適正に計上されてますか
  5. イレギュラーな取引について、取引開始の経緯を含めて説明できますか
  6. グループ法人または役員親族間の取引金額は適正ですか
  7. 給与課税対象になる外注費はありませんか
  8. 従業員から外注先になった者の外注費計上の正当性は説明できますか

期末棚卸資産関係

  1. 期末棚卸資産の明細表等の集計は正確ですか
  2. 期末棚卸資産計上については、棚卸実施状況も含めて説明することができますか
  3. 預け在庫及び積送品については計上していますか
  4. 期末棚卸資産計上額には労務費が算入されていますか

人件費関係

  1. タイムカードまたは出勤簿等の勤務状況資料を含めて、人件費計上の流れを説明できますか
  2. 退職したアルバイトなどの非正規社員については、その者の住所等も含めた詳細説明ができますか

一般管理費関係

  1. 一般管理費に関する証憑類は調査官に提示できる状況ですか
  2. 期末の一般管理費の計上が適正に計上されていますか
  3. 短期前払費用で損金計上した費用については、損金算入の要件を満たしていますか
  4. 紛失した証憑類がある場合、取引内容及び取引先への確認が可能ですか
  5. 接待交際費と他の勘定科目との区分は適正にされていますか
  6. 旅費規定作成を含めた旅費精算は適正にされていますか
  7. 修繕費と資本的支出の判定は適正にされていますか
  8. 商品評価損の計上がある場合は、資料に基づいて説明できますか
  9. 貸倒損失の計上がある場合は、資料に基づいて説明ができますか
  10. 従業員に家賃や昼食の補助を行っている場合、源泉所得税課税は大丈夫ですか
  11. 保険料については、資産計上分と損金計上分を適正に区分していますか
  12. 交通違反金などの罰科金は、法人税申告書で損金不算入にしていますか

その他

  1. 仮受金や前受金で売上計上すべきものはありませんか
  2. 仮払金の精算は適正にされていますか
  3. 役員に対する貸付金には利息収入を計上していますか
  4. 固定資産の除却損がある場合は、証拠資料等で説明できますか
  5. 役員退職金については、損金算入の要件を満たしていますか
  6. 消費税申告の計算において、課否判定は適正にされていますか
  7. 契約書や領収証には適正な収入印紙が貼付されていますか