今回は国税調査官時代に確定申告相談業務に従事した経験及び記帳指導税理士としての経験をもとに、確定申告前にもう一度チェックしておくべき注意事項を紹介する。
- 個人事業主の方
- サラリーマン等の方
1. 個人事業主の方
青色申告特別控除について
ア. 青色申告者で、正規の簿記(一般的には複式簿記)の原則に従って記録し、その帳簿等に基づいて作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書とともに期限内に提出する場合には、最高65万円の控除を受けることができる。
イ. ア以外の青色申告者は、最高10万円の控除を受けることができる。
※注意
現金主義を選択している者はアの適用はされない。
山林所得及び事業規模でない不動産の貸し付けによる不動産所得もアは適用されない。
次に揚げる場合には、不動産の貸付けが事業として行われているものと取り扱われる。
- A. 次の事実のいずれかに当てはまる場合
a. 貸間、アパート等について、貸与できる独立した室数がおおむね10室以上であること。
b. 独立家屋の貸付については、おおむね5棟以上であること。 - B. 賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみて、Aのa又はbの場合に準ずる事情があると認められる場合。
プライベートで消費した販売商品等について
販売商品等などの棚卸資産をプライベート(家事)のために消費または贈与した場合には収入金額となる。この場合の収入金額は、その販売商品等の販売価額になるが、仕入価額で収入金額を計算しても差し支えない。
※仕入価額が通常の販売価額よりもおおむね70%の金額よりも低いときは、通常の販売価額の70%の金額。
租税公課について
必要経費になる租税公課とは
- 事業税
- 固定資産税
- 自動車税
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 印紙税など
※納期が翌年2月である固定資産税の第4期分も、その年分の未払経費として必要経費になるが、翌年分の必要経費にしても差し支えない。
必要経費にならない租税公課とは
- 所得税及び復興特別所得税
- 相続税
- 住民税
- 国税の延滞税・加算税
- 地方税の延滞金・加算金
- 罰金、科料、過料など
消費税等の税込経理の納付税額及び還付税額について
消費税等の納付税額は、消費税等の申告時に必要経費に計上するのが原則であるが、その年分の未払金に計上してその未払金に計上した金額をその年分の必要経費にしても差支えない。
消費税等の還付税額が生じた場合には、還付を受ける時の雑収入に算入するのが原則であるが、その年分の未収入金に計上してその未収入金に計上した金額をその年分の雑収入に算入しても差支えない。
消費税等の税抜経理の納付税額及び還付税額について
仮受消費税等の金額と仮払消費税等の金額との差額と、納付あるいは還付される消費税等とに差額が生じた場合には、この場合の差額については、その課税期間に対応する年の雑収入又は必要経費に算入する。
プライベート(家事)の費用について
プライベート(家事)分と事業分が混合している経費については、適切な按分計算によって、プライベート(家事)分と事業分を区分して事業分のみを必要経費にする。
- 店舗兼住宅について支払った地代家賃や火災保険料、固定資産税、修繕費などの住宅部分に対応する費用は必要経費にならない
- 水道料や電気料、燃料費などのうちに含まれているプライベート(家事)分の費用は必要経費にならない
- 携帯電話料金や固定電話料金などのうちに含まれているプライベート(家事)分の費用は必要経費にならない
2. サラリーマン等の方
医療費控除で健康保険組合等から補填金などがある場合
生命保険、損害保険、健康保険組合から補填金がある場合は、保険金などで補填される金額として、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引く。
※引ききれない金額が生じた場合であっても、他の医療費からは差し引かない。
国民年金保険料の「後納制度」により過去の保険料を納めた場合
「後納制度」により保険料を納めた場合は、その全額を納めた年に社会保険料控除する。
「後納制度」とは、平成27年10月から平成30年9月までの3年に限り、過去5年間分までの国民保険料を納めることができる制度である。
国民年金保険料の「2年前納制度」により保険料を納めた場合
「2年前納制度」により納めた国民年金保険料を社会保険料控除する場合は、次のいずれかを選択することができる。
- 全額を納めた年に社会保険料控除する。
- 各年分の保険料に相当する額を各年に社会保険料控除する。