税務調査で問題点として挙げられる事項の中には「クロ」とは必ずしも言いがたい「グレーゾーン」に含まれるものも存在する。どういった場合にグレーゾーンが発生しやすいのか、またどのように説明するべきか「守る側」である経理担当者が知っておくべき事項を整理してみた。後半は、税務調査官の質問調査手法について解説している。調査官と会話する際の参考にしてみて欲しい。
目次
- グレーゾーンとは
- グレーゾーンの攻防
- 税務調査官とは一期一会
- 税務調査官の質問調査要領
1.グレーゾーンとは
1-1.グレーゾーンとは
税務調査の問題点は、白、黒、灰色(グレーゾーン)の3つに分かれる。
白と黒の部分は確定事項である。しかし灰色部分(グレーゾーン)については、事実関係と税務調査官の裁量に左右される項目であり、説明する側(納税者及び税理士)の説明能力によって否認されるか否かによって増額所得の金額も変わってくる。
1-2.守る側(経理担当者)の対策
税務調査ではグレーゾーンが争点になる可能性が高い。有利に進めるためには事前準備の段階でグレーゾーンになりそうな項目を抽出して、説明できるように万全に準備しておくことが必要だ。
2.グレーゾーンの攻防
2-1.税務調査官にとってもグレーゾーンは難問?
税務調査官にとってもグレーゾーンの可否を断言するのは難しく、一方的に更正決定処理するのは容易ではない。
2-2.守る側(経理担当者)の対策
グレーゾーンでは、守る側(経理担当者)と攻める側(税務調査官)の主張が異なるケースが多いが、攻める側も決め手がない。容易に妥協して結論を出すのではなく、納得してもらうまで粘り強く説明する。
2-3.グレーゾーンになりやすい勘定科目
- 役員報酬・・・・過大役員報酬に該当しないか
- 役員退職金・・・過大役員退職金に該当しないか
- 特殊関係使用人に対する給与……不相当に高額な部分はないか
- 修繕費・・・・・資本的支出(資産計上)に該当しないか
- 旅費日当・・・・社会通念上の範囲内か
- 従業員等への慶弔費・・・・社会通念上の範囲内か
- 貸倒損失・・・・本当に回収不能か
2-4.役員等の個人的経費の付け込み
役員等の個人的な支出を会社の経費に付け込んで利益を圧縮し、納税額を減少させているか否かについて税務調査官は必ず調査ポイントにしており、争点になりやすい項目である。
2-5.守る側(経理担当者)の対策
役員等の個人的な支出と誤解されやすい経費については、支出時に帳簿の備考欄などに使途等をメモすることで、税務調査時に説明できるように準備を万全にしておく。
3.税務調査官とは一期一会
国税という職場は転勤が非常に多く、統括官(課長級)以下の大半の職員は3年~4年のサイクルで転勤を繰り返す。同じ調査先に2回以上調査を行うことは滅多にないので税務調査官とは一期一会といえる。
元税務調査官からのアドバイス
税務調査官との付き合いは一期一会なので、調査中の税務調査官に大いに意見を主張しても次の調査には影響しないので遠慮は禁物である。
4.税務調査官の質問調査手法
4-1.税務調査官の「8何の原則」
税務調査官が行う「8何の原則」の質問項目を列挙する
- だれが・・・・・・人物
- いつ・・・・・・・日時
- どこで・・・・・・場所
- 何を・・・・・・・取引事項
- 何をもって・・・・用具および数量
- なぜ・・・・・・・動機
- どのようにして・・手段や方法
- どうしたか・・・・結果
「8何の原則」の質問に対する守る側(経理担当者)の対策
- グレーゾーンになりやすい項目や誤解されやすい項目などは、予め「8何の原則」に回答できるように準備しておく
- 回答に矛盾点がないかを予め検証しておくとともに、証拠書類なども用意することによって回答の正当性を裏付けておく
4-2.親しげな口調と雑談を交えながら質問調査を行う。
税務調査官は調査される側の警戒心を取り除くため、親しげな口調と雑談を交えながら質問調査を行う。
守る側(経理担当者)の対策
- 税務調査中の調査官は敵である(調査官に心を許さぬように気を付ける)
- 余計なことは喋らない
- 曖昧な回答はしない。直ぐに回答できない場合は曖昧な回答をするのではなく、後に事実を整理してから回答する旨を調査官に伝えて出来る限りスキのない回答をする