交際費の取扱いが税制改正で変わる!覆面税理士が詳しく解説

今回は、平成26年度税制改正大綱でも取り上げられ、ニュースなどでも取り扱われることの多くなった交際費についてだ。

「交際費を使うことで税金が高くなる?」
「交際費は経費にならない?」
「飲食費は経費になるようになったらしい?」

など、交際費の税務上の取扱いについては、知られているようであまり知られていない。

また、近年、交際費の取扱いについては改正が続いており、支出する年度によって取扱いが変わるという複雑さだ。そこで、覆面税理士が交際費についてわかりやすく解説しよう。

  • 交際費等の取扱い概要
  • 年度で違う交際費等の取扱い
  • 平成26年度税制改正で大きく変わる
  • 間違いやすい交際費等の範囲
  • 交際費の取扱いまとめ

交際費の取扱い概要

取引先やアライアンス先と飲みに行った費用やお歳暮の費用等、いわゆる交際費については税金を計算するときに特別な取扱いをしていく。

交際費も事業を行うための支出のため、本来は損金(経費)にすべきだ。

しかし、冗費を節約(ムダ使いを防止)し、会社の内部留保を厚くするという目的から損金(経費)にいれることに制限を設けている。

損金(経費)にならないと、その分所得(もうけ)が大きくなり、納税負担が重くなる。

※損金とは、所得(もうけ)を計算するときに、益金(収益)から控除されるものである。利益を計算するときの経費や費用に近いものである。

 

年度で違う交際費等の取扱い

交際費等の取扱いは、近年よく改正が続いており、年度によって取扱いが違うため、注意が必要である。

事業年度開始日が平成25年3月31日以前の場合

中小法人の場合(原則として、資本金1億円以下の会社が該当)

・600万円までの10%は損金にならない。
・600万円を超える部分の金額は損金にならない。

(例) 交際費を700万円支出した場合には100万円と60万円の合計160万円が損金にならない。

交際費等の取扱い(25年3月31日まで)

?大法人(資本金1億円超の会社等)

交際費は全額損金にならない。

事業年度開始日が平成25年4月1日以降の場合

中小法人の場合(原則として、資本金1億円以下の会社が該当)

800万円を超える金額は損金にならない。

(例)交際費等を900万円支出した場合には100万円が損金にならない。

交際費等の取扱い(25年4月1日から)

大法人(資本金1億円超の会社等)

交際費は全額損金にならない。

 

平成26年度税制改正で大きく変わる

12月24日の閣議で平成26年度税制改正大綱が決定された。

まだ、法制化はされていないが、毎年税制改正大綱の内容でほぼ決定されているのでご紹介しょう。

今回は、これまで交際費を損金に入れることが認められていなかった大企業も、交際費のうち飲食費の半分までは損金として認められることになった。飲食店での接待需要を促し、景気浮揚効果を狙った政策的な改正だ。

※その他の平成26年度税制改正大綱の内容についてはコチラを見て欲しい。

中小法人の場合(原則として、資本金1億円以下の会社が該当)

下記①か②の選択適用になる。

① 800万円を超える金額は損金にならない。(上記と同様)
② 飲食のために支出する費用の50%を損金に入れる。あとは損金にならない。
※ 飲食のために支出費用には、専らその法人の役員、従業員等に対する接待等のために支出する費用(いわゆる社内接待費)を含まない。

飲食費だけで1,600万円超ある場合は②の方が有利になる。

(例)交際費等を2,000万円(うち、飲食費1,800万円)支出をし、②を選択した場合

改正交際費

大法人(資本金1億円超の会社等)

飲食のために支出する費用の50%を損金に入れる。あとは損金にならない。(上記②と同じ)

間違いやすい交際費等の範囲

税法で決められている交際費の範囲は一般の認識よりも広くなっている。
税法では、次の3つの要件を満たしたときに交際費として認定されるという解釈が有力である。

  1. 支出の相手方が事業に関係のある者等で
  2. 支出の目的が事業関係者等との親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図ることであり、
  3. 行為の形態が接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であること

次からは、間違いやすい交際費の例をご紹介しよう。

? 取引先の営業マンが近くに来たので、1食2,000円のランチをご馳走した。

これも基本的には交際費に該当するが、飲食等のために要する費用で1人5,000円以下のものは、一定の書類を保存している場合には交際費には該当しない。

? 本社から役員が出張に来たので、会議の後に役員と一部の社員数名で飲みに行った費用

社内の者同士で飲みに行った場合も交際費に該当するケースがある。社内の者同士で行った場合には、上記の5,000円基準は適用できないため、金額には関係なく交際費に該当する。全社員に行く機会が均等に与えられているような慰安旅行や忘年会などは、基本的に福利厚生費に該当する。

? 取引先の社員を接待した際に、その従業員の帰りのタクシー代を負担した。

一般的な認識では、接待の飲食費用は交際費だが、タクシー代は旅費交通費である。しかし、税法の交際費には接待をするためのかかった間接的な費用も交際費に該当する。

? 取引先の社員2名と当社の社員2名でランチミーティングを開催し、食事代を負担した。

会議に関連して、通常要する飲食費は会議費として、交際費に該当する。会議としての実態を備えていることがポイントである。会議としての実態を備えていることが後で説明できるように議事録などを残しておくといいだろう。

 

交際費の取扱いまとめ

交際費の取扱いについては、近年改正が続いている。そのため、接待などを実施する期で取扱いが異なる。まずは、当期が上記のどの取扱いになるのか確認が必要である。

また、交際費に該当するか、福利厚生費や会議費、広告宣伝費に該当するのか、というのは判断が難しいところである。交際費等に該当するかどうかは、 個別の状況により異なるため、形式的に判断せず相手方・目的・行為を検討し判断することが大切である。