知って得する役員報酬の決め方!4つのポイントで解り易く解説

役員報酬は変更が容易ではないため、役員報酬の決定が会社に及ぼす影響は大きいものです。
役員報酬の決定で失敗しないために、金額の決定方法や手続きでおさえるべきポイントを解説します。

  1. 役員報酬を決定する手続き
  2. 役員報酬の決め方
    a. 利益計画から決定する方法
    b. 希望額から決定する方法
  3. 一番税金が安くなる役員報酬を算定してみた
  4. 税額負担が少なくなる役員報酬シミュレーション
  5. 知って得する役員報酬の決め方!まとめ

 

1. 役員報酬を決定する手続き

役員報酬を決める時期は会社法では定めはありませんが、法人税法で役員報酬のうち会社の経費として認める以下の要件が定められています。

  • 定期同額給与・・・事業年度開始の日から3か月以内に役員報酬を確定(株主総会議事録の作成が必要)
  • 事前確定届出給与・・・税務署に株主総会(社員総会)から1か月以内に税務署へ届出
  • 利益連動型給与・・・同族会社以外で一定の要件を満たした場合のみ
    (中小企業のほとんどの会社が同族会社に該当するため、今回は説明を省略します。)

決算から2か月以内に株主総会の承認と法人税等の申告を行うことが原則となっています。

この規定は、役員報酬の変更をいつでも何回でもできるという制度にしてしまうと、期末に役員報酬の増額し、法人税の課税逃れが容易になるため、これを防ぐために設けられている規定です。

株主総会の議事録については、こちらのテンプレート集にありますので、ご活用ください。

ただし、事業年度開始から3か月経過後の役員報酬の変更が全て禁止されているわけではありません。
増額する場合と減額する場合、それぞれの要件を満たしていれば期中に役員報酬を変更することも可能です。

増額する場合

  • 役員の職制上の地位の変更、役員の職務の内容の重大な変更などやむを得ない事情による改定
    (ex:非常勤取締役から常勤取締役への変更など)

減額する場合

  • 役員の職制上の地位の変更、役員の職務の内容の重大な変更などやむを得ない事情による改定
    (ex:常勤取締役から非常勤取締役への変更など)
  • 経営状況が著しく悪化したことなどによりされた定期給与の額の改定
    (ex:経営状態の悪化に伴い、第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情があるときで、例えば取引銀行との間で行われる借入返済のリスケジュール協議による減額など)

 

2. 役員報酬の決め方

それでは、役員報酬を決める手続きはわかったけど、どれぐらいの金額の役員報酬をもらうのがいいの?という疑問が生じるかと思います。

そこで、役員報酬の決め方のうち下記のふたつを見ましょう。

  • 利益計画から決定する方法
  • 希望額から決定する方法

 

・利益計画から決定する方法

自分の役員報酬を加味せずに自社の利益計画を作成していただき、残った利益の金額までを自分の役員報酬として決定する方法です。

こちらの方法を採用する場合は、そもそもの利益計画で計算された金額の根拠がどの程度正確かという点がポイントになります。
実績と乖離した粗利益の率や経費の金額、売り上げの増加が計画に入っているのであればしっかりとそのための広告宣伝費が盛り込まれているか等注意してください。

業績が予定より悪化した場合、役員報酬として会社から支給することが出来ていない金額が生じたとしても、理論上の役員報酬の金額に対して個人の所得税が課税されます。
そのため、業績の悪化により役員報酬を全額会社から支給できていない場合、個人が高額な税負担を負う可能性があるということです。

ただし、借入がある場合や、投資を行う場合は、その金額を借入返済や手元資金として残すだけの利益を役員報酬計上後でも残せるように気を付けて下さい。
借り入れがある場合の会社の利益の読み方はこちらのブログで記載しておりますのでご参照下さい。

 

・希望額から決定する方法

先に述べた役員報酬の決定方法の場合、売上から経費を差し引いて残った金額しかもらえない!もっとほしい!という方がとるべき役員報酬の決め方はこちらです。

先程の計算で希望額を受け取れないという事は、売上が足りないか、粗利率が低すぎるか、他の固定費が多すぎるということになります。

役員報酬の希望額と実質受取可能な算定額との差額を他の売上や利益に貢献しない固定費を削減することで捻出できるのであれば、問題ありません。

しかし、固定費は必要最小限しか使っていない場合には、希望役員報酬の金額を支給するためには、売上が足りない、もしくは粗利率が低すぎるということになります。
そもそもの売上を上げるための努力を行うか、取引条件の変更を行う、取り扱う商材の変更を行うということが必要になります。どちらにしても現在考えている事業計画のままでは難しいということをご認識頂き、さらに計画に改善を重ねるか、希望の役員報酬を来年獲得するために、当期の事業計画に手直しをいれるという事が必要になります。

希望の役員報酬額を意識して頂くという事は、会社の業績を伸ばしたり目標を設定したりする上でとても重要なポイントになります。
利益計画から算定した役員報酬の額で問題ないという方も、是非来年や5年後にどの程度の役員報酬を支給することが出来る会社にしたいのか、ということをご検討ください。

 

3. 一番税金が安くなる役員報酬を算定してみた

上述の内容では、役員報酬の金額をできるだけもらってくださいというお話をしてきましたが、役員報酬として役員個人のものとなった資金であれば、個人で使おうが会社に貸そうが自由になる為、なるべく多くの役員報酬を支給して頂き、自由に使える資金を増やしていただこうという趣旨でした。

ここで少し趣向を変えて、節税のための手段としての役員報酬を考えてみましょう。
ご存知の方も多いかと思いますが、会社の法人税も個人の所得税も、所得(利益)が多い方が、税率が上がっていきます。さらに、ある一定のタイミングで、所得税の税率は法人税の税率を上回ることになってしまいます。
つまり節税という観点からすると、資金の利用に関する自由度よりも、会社と個人とで所得をある程度分散させてしまった方が税負担を少なくすることが出来るのです。

 

今回は簡便的に役員について、扶養なし、保険控除等なし、社会保険等の計算も加味しない金額で計算しますが、ご自身の場合はどうなるかを是非ご確認ください。

役員報酬の金額が527.5万円までは所得税として課税される税率は地方税も併せて最高で約20.21%です。
会社の実効税率(法人税+地方税等の会社の所得に対する税金)は最低でも約22.86%なので、役員報酬が527.5万円までは会社に利益を残すよりも、役員報酬として支給する方が税負担が少ないということです。

しかし、役員報酬を527.5万円より上で計算をすると、最高税率が約30.42%になります。つまり、527.5万円を超える金額については、会社の実効税率が約22.86%の範囲までは会社に利益を残した方が税負担が低くなるのです。

その後、個人の税負担は約33.48%、約43.69%、約50.84%と上昇していき、会社の実効税率は約24.55%、約38.37%と上昇していきます。

個人の所得税の税率が会社の実効税率を超えてしまう時点で、役員報酬で法人税を抑えるのではなく、会社に利益を残してキャッシュを残すという選択肢も考えられるのではないでしょうか?

扶養なし、保険控除等なし、社会保険等の計算も加味しない金額の場合、どの時点で会社の簡単にまとめた表を載せておきますので、そちらもご参考にしてください。

税率比較

(※平成27年3月25日現在の税率に基づいて計算しております。)

 

4.税額負担が少なくなる役員報酬シミュレーション

自社の利益の金額と社会保険料、扶養親族の人数を入れることで一番税負担の少なくなる役員報酬シミュレーション(別サイトへ移動)をご用意しました。

現在の利益であればどの程度の役員報酬が一番税負担が少ないのか、 目標利益を達成したときにどの程度の役員報酬をもらうのが一番得かを一目で確認できますので是非ご活用ください。

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5.知って得する役員報酬の決め方!まとめ

税金以外にも役員報酬が少なく会社から社長個人へ資金の貸付が生じた場合には銀行への融資の申込の際に大変不利に働きますので、
役員報酬の決定は会社の経営に大きな影響を与えます。

自身の将来や会社の今後の展望のためにどのようにお金を残していくかを考える上で役員報酬の決定は重要な要素となります。

無駄な税金は少なく会社をより発展させることができる役員報酬の決定の為の助けになれば幸いです。