大幅改正!平成30年分以降の配偶者控除及び配偶者特別控除

平成29年度税制改正により、平成30年分以後の所得税について変更がありました。
これによって、配偶者控除及び配偶者特別控除を受けられる範囲や、控除金額に加え、毎月の給料計算にかかわる、源泉所得税の計算方法や、年末調整の際に確認していた扶養控除申告書の様式、記入方法が変わりました。

どのように変わったのか解説していきます。
今回の平成29年度税制改正による、配偶者控除及び配偶者特別控除に関わる変更は、大きく次の3点です。

  1. 配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額の改正
  2. 控除を受けられる配偶者の区分が3種類に
  3. 配偶者に係る扶養親族等の数の計算方法の変更

1.配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額の改正

平成29年分以前の所得税については、給与所得者の所得金額に関係なく、合計所得金額が38万円以下の配偶者がいる場合には、配偶者控除の適用を受けることができました。
また、配偶者控除が受けられない方でも、給与所得者の合計所得金額が1,000万円以下であり、かつ、配偶者の合計所得金額が38万円超76万円未満である場合については、配偶者特別控除の適用を受けることができました。

改正後は、配偶者控除の控除額が変更されたことに加え、給与所得者の合計所得金額が 1,000 万円(給与額面で1,220万円)を超える場合には、配偶者控除の適用を受けることができないことになりました。

また、配偶者特別控除の範囲、控除額も改正されています。
対象となる配偶者の合計所得金額の範囲が広がり、38 万円超 123 万円以下(給与額面で103万超201万円以下)とされました。

そして配偶者控除、配偶者特別控除の金額は、給与所得者の所得によって下記のように変わりました。

  • 給与所得者の合計所得金額 900 万円以下(給与所得だけの場合、給与等の収入金額が1,120万円以下)の場合
    ➡控除金額は最大で38万円、老人控除対象配偶者の場合は48万円
  • 給与所得者の合計所得金額 900 万円超950 万円以下(給与所得だけの場合、給与等の収入金額が1,120 万円超 1,170 万円以下)の場合
    ➡控除金額は最大で26万円、老人控除対象配偶者の場合は32万円
  • 給与所得者の合計所得金額950 万円超 1,000 万円以下(給与所得だけの場合、給与等の収入金額が1,170 万円超 1,220 万円以下)の場合
    ➡控除金額は最大で13万円、老人控除対象配偶者の場合は16万円

老人控除対象配偶者とは、その年の12月末時点で70歳以上の方です。

この控除金額は配偶者の所得金額があがるにつれ、減少していく形になります。

 

2.控除を受けられる配偶者の区分が3種類に

この改正により、控除対象となる配偶者についての用語が増えました。
改正前は「控除対象配偶者」の1種類のみでした。
これは控除を受ける給与所得者と生計を一にする配偶者で、合計所得金額が38万円以下(給与額面が103万円以下)の配偶者が該当しました。

改正後は、下記の3種類に区分されます。

  1. 源泉控除対象配偶者
  2. 同一生計配偶者
  3. 控除対象配偶者

これらは控除をうける給与所得者と、その配偶者の収入によって分けられます。
それぞれ配偶者控除及び配偶者特別控除を受けられる金額、申告書への記載方法、源泉所得税の計算といった点で、扱いに違いがあります。

  1. 源泉控除対象配偶者
    控除をうける給与所得者の給与の額面金額が1,120万円以下(所得金額900万円以下)の場合の、給与の額面金額が150万円以下(所得金額85万円以下)の配偶者をいいます。
  2. 同一生計配偶者
    控除をうける給与所得者の所得金額に制限はありません。
    給与の額面金額が103万円以下(所得金額38万円以下)の配偶者をいいます。
  3. 控除対象配偶者
    平成30年分以後は、同一生計配偶者のうち、給与所得だけの場合の給与等の収入金額が1,220万円以下(合計所得金額1,000万円以下)である給与所得者の配偶者をいいます。


※1~3については、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます。

3.配偶者に係る扶養親族等の数の計算方法の変更

平成30年から、給与を支払う際に徴収する源泉所得税の計算の際に使用する、扶養親族の数の算定方法が変わります。

給与を支払う際に源泉徴収する税額は、「給与所得の源泉徴収税額表」によって求めることは、経理の方ならご存知かと思います。
「給与所得の源泉徴収税額表」の甲欄を適用する場合、扶養親族の数によって税額が変動しますが、この扶養の数は「扶養控除申告書」の記載内容から確認していました。

今回、扶養控除申告書の記載の仕方が変わるだけでなく、扶養親族の算定方法が変わります。

どのように変わったかというと、まず「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、「源泉控除対象配偶者」欄ができました。


配偶者が源泉控除対象配偶者に該当する場合には、この「源泉控除対象配偶者」欄へ記載し、扶養親族等の数に1人を加えて計算することになります。それ以外の配偶者であれば、この欄に記載しません。

つまり、所得金額が900万円以下で、配偶者の所得金額が85万円以下の場合に、この欄に記載することになります。
所得金額が900万円を超えると、たとえ配偶者の所得金額が38万円以下の場合でも記載することはできませんので、毎月(毎日)の源泉徴収税額の計算では、扶養親族等の数は0人で計算します。

 

配偶者が源泉控除対象配偶者に該当しなくても、障害者に該当する場合には、扶養控除申告書の「障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生」の欄に記載し、扶養親族等の数に1を加えて計算します。

つまり、同一生計配偶者が障害者に該当する場合には、扶養親族等の数に1人を加えて、同一生計配偶者が同居特別障害者に該当する場合には2人を加えて計算します。


例えば、配偶者が源泉控除対象配偶者に該当するとともに、同一生計配偶者である障害者にも該当する場合には、扶養親族等の数に2人を加えて計算します。
また、配偶者が源泉控除対象配偶者に該当するとともに、同一生計配偶者である同居特別障害者にも該当する場合には、扶養親族等の数に3人を加えて計算します。

 

また「給与所得者の配偶者特別控除申告書」が「給与所得者の配偶者控除等申告書」に改められました。

源泉控除対象配偶者に該当しない控除対象配偶者について、配偶者控除及び配偶者特別控除を受ける場合には、毎月(毎日)の源泉徴収税額の計算では考慮されませんが、年末調整により控除の適用を受けることができます。年末調整までに、「給与所得者の配偶者控除等申告書」を会社に提出しましょう。

配偶者の年間見積り所得が変わり、配偶者の区分が異動となった場合には、年の途中では源泉徴収税額をさかのぼって徴収・還付はできないので、こちらも年末調整で精算することになります。異動があった旨を会社に伝えましょう。

 

※平成30年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書はこちらからダウンロードしてください。
記載例はこちらです。

※平成30年分の給与所得者の配偶者控除等申告書はこちらからダウンロードしてください。
記載例はこちらです。

この記事は下記を参考に記載しています。

国税庁「配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しについて
国税庁「配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しに関するFAQ
国税庁「平成 30 年分以降の配偶者控除及び配偶者特別控除の取扱いについて