平成29年度税制改正大綱をわかりやすくまとめました

平成28年12月8日、自民・公明両党は平成29年度税制改正大綱を決定しました。

安倍内閣の「働きかた改革」の推進に向け個人所得課税改革の第一弾として配偶者控除の年収要件を引き上げました。
また、企業による「攻めの投資」を後押しするため、税制として賃金の引き上げを促すための取組みを進め、またアベノミクスの効果を波及させるために地域中小企業向けの設備投資促進税制を創設する等の地方創生を推進するための措置を講じています。

今回は、「平成29年度税制改正大綱」のうち、中小企業や個人に対して影響を与えるものについてピックアップして解説させていただきます。
原案は「自民党ホームページ」より見ることが可能です。

  1. 個人所得課税
    ①配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し
    ②積立NISAの創設
  2. 法人課税
    ①研究開発税制の見直し
    ②所得拡大税制・賃上げした中小企業の減税拡充
    ③中小企業者等の軽減税率の特例の延長
  3. 相続税・贈与税
    ①相続税又は贈与税の納税範囲の見直し
    ②タワーマンションに係る課税の見直し
  4. その他
    ①外国子会社合算税制等の見直し
  5. まとめ

 

1.個人所得課税

①配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し

配偶者控除及び配偶者特別控除が下記にように見直されました。

  • 平成30年度の所得より配偶者の給与収入が150万円以下までは配偶者控除を適用できます(現行103万円まで)
  • 居住者自身(世帯主)の合計所得金額が1,000万円超だと配偶者控除の適用ができなくなります。また下記段階に応じて控除額が変動します。
    所得金額 900万円以下…38万円(老人控除対象配偶者の場合48万円)
    所得金額 900万円超950万円以下…26万円(老人控除対象配偶者の場合32万円)
    所得金額 950万円超1,000万円以下…13万円(老人控除対象配偶者の場合16万円)
  • 配偶者特別控除については配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下(給与収入のみの場合で2,014,285円以下)まで適用できます(現行では141万円以下まで)。配偶者控除の改正と同様に、居住者自身の所得金額に応じて段階的に控除額が変動します。

②積立NISAの創設

現行のNISAは年間120万円の購入枠が設けられており、売却益や配当については5年間非課税となっています。今回新たに現行制度との選択制として、積立NISAが創設されます。特徴は下記のとおりです。

  • 年間の投資上限額は40万円。
  • 非課税期間は20年。
  • 長期の累積投資に適した商品性を有するものに限定されます。

 

2.法人課税

①研究開発税制の見直し

試験研究を行った場合の税額控除制度(研究開発税制)について、平成29年4月1日以後に開始する事業年度から下記の見直しを行います(所得税についても同様です)

  • 中小企業は開発費用の最大17%(現行12%)、大企業は最大14%(現行10%)の税額控除
  • 対象となる試験研究に製品の製造、技術の開発・考案・発明に加えて「サービス開発」が追加。

②所得拡大税制・賃上げした中小企業の減税拡充

企業の賃上げを促す減税制度を拡充し、前年と比較し社員の給与を2%以上増やした中小企業に、給与総額の増加分の最大22%(現行10%)が法人税から控除可能になります。

③中小企業者等の軽減税率の特例の延長

中小法人等の法人税の軽減税率の特例(課税所得800万円以下の部分については法人税率15%)が平成31年3月31日以前開始事業年度まで延長されます。

 

3.相続税・贈与税

①相続税又は贈与税の納税範囲の見直し

  • 現行では国内に住所を持たず日本国籍を有する人が、5年超海外に居住すれば、その国外財産については相続税・贈与税の対象外となっていました。
    今回この「5年の海外居住要件」が「10年超」に見直されます。
  • 日本に住所・国籍を持っていない人が10年以内に国内に住所を持っていた人から相続・遺贈により取得した国外財産については相続税の課税対象とされます。

②タワーマンションに係る課税の見直し

平成30年度から新たに課税される居住用高層建築物(高さが60m超)に係る固定資産税・不動産取得税について下記のとおり見直しされます。

  • 建築物全体の固定資産税額を按分する床面積の割合について、1階を100とし、1階増すごとに10/39を加えた補正率で計算されます。この結果、高階層の方は課税額が大きくなり、低階層の方は課税額が少なくなります(1階に比べると30階は約7.4%、40階は約10%ほど税額が高くなります)。この措置は不動産取得税についても同様です。

 

4.その他

①外国子会社合算税制(タックスヘイブン税制)の見直し

パナマ文書の流出等をきっかけに多国籍企業や富裕層の課税逃れに対する対応が課題になっており、それに対する税制改正も決定しました。

  • 外国子会社の税負担率だけでなく、個々の活動内容により、合算課税の有無を把握する仕組みへと見直しが行われます。
  • 従来のトリガー税率が撤廃されるが、租税負担割合が20%以上であれば合算課税は継続して行われないこととなります。しかし、特定の法人(ペーパーカンパニーなどの経済実体のない法人で税負担割合が30%未満)については、合算課税の対象となります。
  • 外国子会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

 

5.まとめ

以上、中小企業や個人に影響がある主な改正内容についてまとめさせていただきました。概要の把握にお役立てください。
今後の流れについては、3月には平成29年度税制改正法案が成立・公布。4月1日には施行となるだろうと予想されます。