元税務調査官が語る!「マイナンバー制度導入で恐くなる税務調査」

今回の記事は「元税務調査官が語る本当が恐い税務調査!」のシリーズとして井阪が担当させていただきます。スペシャルゲストとして、弊社顧問で元税務調査官の前原に、マイナンバー制度導入による税務調査への影響について質問していきたいと思います!

元税務調査官 前原貴之
25年間大阪国税局で勤務し、20年以上法人税と消費税の調査を行ってきた税務調査のスペシャリスト。
この経理通信でも「元税務調査官が語る」シリーズで税務調査に関するコラムを多数執筆。

  1. 税務署は日本国グループの一員?
  2. アルバイト収入がある場合は要注意!?
  3. 預金口座にマイナンバー制度が導入されれば!?
  4. 参考……元税務調査官の知恵袋

 

1. 税務署は日本国グループの一員?

井阪
「まず、マイナンバー導入による税務調査への影響はありますか?」

前原
「大いにあります。税務調査を実施する税務署は、全国展開している国税庁という大組織の中の一支店で高い情報収集能力を持っていますが、マイナンバー制度導入で他官庁の情報を共有できるようになり、この力が一層強化されます。」

井阪
「具体的な例をあげるとすればどんなことが考えられますか?」

前原
「例えばある会社が簿外で遠方に土地等の不動産を所有している場合は、固定資産税(地方税)の課税状況を知ることで所有の事実を把握できます。税務署は国税庁の一支店であると同時に日本国グループの一員でもあり、現在も他官庁とは協力関係にあります。しかしマイナンバー制度導入によって協力関係は一層強化されることになります。」

 

2. アルバイト収入がある場合は要注意!?

井阪
「マイナンバー制度導入によって、気を付けるべきことについて教えてください。」

前原
「サラリーマンで、休日や空き時間を利用してアルバイトを行い且つ確定申告が必要となる人は。注意が必要となります。マイナンバー導入によって、個人ごとの収入の把握が容易になりますので、確定申告が必要にもかかわらず申告していない者については、税務署から申告書提出や追徴税額に関する事項での接触が想定されますので、注意して適正に確定申告するように心掛けて下さい。」

井阪
「それ以外には?」

前原
「扶養控除についてです。税務署は扶養控除になっている配偶者や子供の収入を把握することも容易になります。例えば、大学生の子供がいる場合、大学生だから扶養控除対象にするのではなく、アルバイト等の収入を確認してから扶養控除の適用を判断してください。確認を怠って適用した扶養親族の給与収入が103万円を超えていれば追徴課税されますので、気を付けて下さい。
また、一か所のアルバイトの給与が103万円以下でも、二か所で103万円を超えるケースもありますので、注意が必要となります。」

 

3. 預金口座にマイナンバー制度が導入されれば!?

井阪
「金融機関の預金口座管理にマイナンバー制度が導入されればどうなりますか?」

前原
「恐らく税務署は、個人、法人に問わず納税者の預金状況の全容を把握できると思われます。現在も国税局や税務署は、あらゆる機会を通じて、預金口座に関する資料情報の収集を行っていますが、限界があり完全とは言えないのが状況です。しかし預金口座管理にマイナンバーが導入されれば預金状況の全容把握ができ、預金に関する取引の内容把握も容易となります。」

井阪
「よくわかりました。」

前原
「マイナンバー導入によって税務署の情報収集能力は確実に強化されますので、どんなに巧妙な手口を使っても脱税行為は必ずバレてしまいます。」

井阪
「適正申告を心掛けるのが一番ですね。ありがとうございました!」

 

4. 参考…元税務調査官の知恵袋

① 「お土産」は逆効果?

税務調査での「お土産」とは……
予め税務調査で否認され修正申告をする項目を用意しておくこと。例えば、数十万円の期末売上の帳端分の計上漏れや期末棚卸計上漏れなどである。

お土産は逆効果!
確かに税務調査官は修正すべき事項を見つけ出すのが仕事である。しかし税法という法律によって仕事を行っている以上、税法上において問題がない場合は、申告是認で調査終了するのは当然である。
逆に「お土産」を用意した場合は、税務調査官に他に大きな問題点があるのではないかと疑われることになる可能性が高くなる。

② 昼食とコーヒー

調査当日の税務調査官への昼食は準備すべきではない。
税務調査官は、調査先で昼食の提供を受けてはならないと上司から厳しく指導されており、昼食を準備していたとしても、食べることはない。

コーヒーやお茶については?
コーヒーやお茶を提供することは、通常の接遇の範囲内であり問題はない。